活用するには
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<地域での活用事例>人生すごろく『金の糸』で広げた地域の対話

団体名または
代表者名
藤井達史
共同実施団体名または実施者名
川口裕之 木村尚文 河野修平 関根朋和 
実施形式
対面
参加人数
計231名

実施対象者

子ども、保護者、高齢者や地域住民 など  年齢や立場を問わず、イベントに参加した方

活動の背景、目的

私は2017年に資格を取得してからキャリアコンサルタントとして活動する中で、

キャリア相談が「困ってから行くもの」「何か指導をされる場所」と受け取られ、

どこか日常から切り離されたものとして捉えられているような現状に違和感を抱いてきました。

 

一方で、専門的な相談の場でなくても、日々の出来事や経験を語る中で、自ら意味づけを行い、

次の行動を考え始める人の姿を多く見てきました。

 

そこで本活動では、専門相談の手前に位置づけられる、誰でも気軽に参加できる「語る場」を

つくることを目的としました。

人生すごろく「金の糸」が、ゲーム形式で進行しながら自分の経験や思いを自然に言葉にできる

特性を活かし、正解や結論を出すことをゴールとせず、語るプロセスそのものを大切にする

場に導入したいと考えました。

 

キャリアを進路選択や職業選択に限定せず、「人生を語り直す営み」として捉え直すこと。

その入口となる場を、特別な場所ではなく、地域で誰もがフラリと訪れられる場所で開きたい、

それが私の願いでした。

活動中の参加者の様子、変化

参加者は子ども、保護者、地域住民など多岐にわたり、初めは戸惑いながら参加していた人が、

すごろくを進める中で次第に自分の経験や思いを語り始める様子が多く見られました。

 

また、子どもが語る姿を親が新たな視点で受け止める場面や、体験後に個別面談を希望する

参加者が現れるなど、関わりが一段階深まる変化も確認できました。

 

これらの反応から、本活動が安心して語ることのできる入口の場として機能している手応えを

感じています。

実施にあたって工夫したこと

本活動では、参加のハードルを下げることを最も重視しました。

実施場所は公園や地域イベント、市民活動の場とし、事前申込制ではなく、

気楽に立ち寄れる形を基本としました。

 

また、無料体験形式とすることで、心理的・金銭的な負担を感じずに参加できるよう工夫しました。

ファシリテーションでは、正解や助言を提示するのではなく、参加者の語りを遮らずに

受け止めることを意識しました。

 

さらに、就学前の子どもを連れてきても一緒に遊べるように、

①子供用のすごろくと一緒に体験してもらう等の「遊びの工夫」

②広い屋外での実施を考慮して、サイコロを大きくするなどの「目立つ工夫」

③通りすがりの人でも興味を持ってもらえるような専用の幟を作成するなど

「展示の工夫」も行いました。

 

子ども、親、地域の大人など、参加者の年齢や立場に応じて問いかけの深さや言葉を調整し、

誰もが安心して語れる場づくりを心がけました。

 

そして、体験後には簡単なアンケートを実施し、希望者には個別面談につながる導線

を用意しました。

単発の体験で終わらせず、参加者自身が次の関わり方を選べるよう設計することで、

活動が自然に継続していくことを目指しました。

実施した成果

本活動は、2024年度に金の糸アワード2024企画部門で構想として提示した内容を、

2025年度に地域の現場で継続的に実践・検証してきた取り組みです。

 

本活動を通じて、人生すごろく「金の糸」を用いた対話の場が、単なるイベントに留まらず、

参加者の内省や次の行動につながる力を持つことを実感しました。

キャリアを「進路選択」ではなく「日常の語り」として捉え直す可能性を感じました。

 

また、体験後に個別面談を希望する参加者が現れたことは、場が安心して語れる入口として

機能していた一つの成果だと考えています。

活動を重ねていく中で、キャリアは専門家が与えるものではなく、本人が語りながら意味づけていく

ものだという確信を強めました。

語る場があることで、人は自分の経験を整理し、自ら次の一歩を考え始めると感じました。

 

例えば、親子で参加した場合は、現役の小学生である子供と、数十年前に小学生だった親が

「好きな食べ物」「よく借りる本」などの出来事が符合するという瞬間も見られ、

驚きと親子のそれぞれの慈しみが深まる場面も目撃しました。

 

また、80代の参加者は、つらい小学生時代を涙ながらに振返り、「こんな話は自分の子供達にも

したことはなかった。でも、今の私につながることがある。聞いてもらえて良かった。」と

笑顔で帰って行きました。そのプロセスを支える役割として、キャリアコンサルタントが

関わる意義をあらためて実感しています。

 

今後は、主に親子向け・子ども向けのツール研究と検証を継続し、イベント実施に留まらない

活動として、地域に根ざした形で広げていきたいと考えております。

また、本活動に共感を寄せてくれた仲間とともに、次の担い手が育つ仕組みづくりにも

取り組んでいく予定です。

 

本活動が、一人ひとりが自分の人生を語り直すための、身近で継続的な場として地域に

関わっていくことを目指します。