導入企業様の声
2022-10-07

お互いが協力することで全体として強みを発揮できる一体性のある企業を目指して

ユニバーサルグループ株式会社 治療と仕事の両立支援担当 長瀬 琢磨様

りぼらのしごと体験プログラムに参加しようと考えたきっかけ

私どもの会社は、調剤薬局と介護事業、農業生産物事業をしております。現在 80 名余りの社員が働いているため、今後必ず治療と仕事の両立を支援できる体制が必要となってきます。

実は、私の父親もがんの治療を受けながら仕事を続けていました。父親も薬剤師でしたので薬局で患者さんに必要とされていたことで、治療を頑張ることができたと思っています。

この経験から、がんになっても仕事を継続して役割を持つことの大切さを実感し、まずは社内で両立支援の体制を整えたいと考えました。

これは、治療だけでなく介護や子育てなど仕事との両立が必要になっても安心して働ける職場環境を整えることで、社員の皆さんが長く働いていただくことができます。
また、これから転職や復職を考えている方々にとっても今の生活と両立できることは、会社を選択する要素として重要な取り組みだと考えています。

そのようなことを考えていた時に、がん患者の社会復帰支援事業りぼらのプログラムを知りました。

私どもの会社は、医療や介護など接客に関わる業務が中心のため「仕事をする」=「現場にいること」です。

そのため、りぼらのしごと体験プログラムの説明で、“テレワークでの仕事の提供”が前提となることを知り、難しさを感じた一方で、治療と仕事の両立支援の体制づくりを検討する際に、この経験が活かされると感じました。

まずは、りぼらのしごと体験に企業として参加するために、「なぜこの事業に取り組むのか」ということを経営層や管理部門と共有する必要があると考えました。

そこで、りぼらのスタッフの方々から、りぼらについて説明をしてもらうためのガイダンスを実施していただきました。

ガイダンスを実施したことで、しごと体験プログラムを導入することが目的ではなく、今後会社全体で両立支援に取り組むことが目的であることを皆で共有できたと感じています。

また、従業員向けの治療と仕事の両立支援ガイドブックの制作を社内で進めていますが、管理部門のスタッフがこの事業の必要性を理解しているため、社員の視点に立った様々な提案をいただけていることもガイダンスの成果だと感じています。

しごと体験に参加して

しごと体験に提供する業務の調整について

事前に、業務の抽出用のワークシートを使って、テレワークでお願いできそうな業務を洗い出し、りぼらスタッフ(キャリアカウンセラー)との打ち合わせですり合わせを行いました。
テレワークで仕事というのは、これまで考えたこともなかったのですが、調剤薬局の日常業務を振り返ってみて、緊急ではないものの社員の業務が効率化できるデータベースの作成や、新商品の開発にあたり異業種の方からアイデア出しをしていただくという業務をお願いすることにしました。

実際にりぼら参加者(患者さん)が決まった時点で、どのようなお仕事の経験があり、どのような業務をリハビリとして希望されているかなどを事前に教えてもらえたことで、ご依頼する仕事内容を具体的にイメージでき調整することもできました。

しごと体験を終えて

当初、テレワークでどこまでできるのかという不安はありましたが、Slack というコミュニケーションツールを使用して、本人から業務量や業務内容、労働時間など業務を進める中で不安に感じることを相談してもらえるので安心して見守ることができました。

業務を切り出した時に、この業務が果たして適切なのか?など迷う気持ちがありました。
これから復職しようと思っている人は、任された仕事に対して、「できない」とは言えないだろうということは想像でき、無理してしまうのではという心配があったのです。

しかし、りぼらのしごと体験では、キャリアカウンセラーが、参加者が実際にどんなことを感じ、思っているのかを日々本人から聴き、適宜対応してくれていたので、安心して業務を任せることができました。

これまで「仕事をする」=「現場にいること」と考えていましたが、今回、しごと体験に参加してみて、テレワークやオンラインでもできる仕事、時短でも任せられる仕事があるということがわかりました。

ずっと「必要だけど優先度が高くない」と思っていたデータベースを作っていただけたことで、現場で働く社員はとても助かっています。
また新商品開発にあたり参加者の皆さんが異業種で培った経験から、業界を越えて新たな発想を得ることができたことも収穫でした。

私は、これまでも何人ものがんサバイバーの方のお話しを伺う機会はありましたが、それは社会復帰後しばらく経って自分自身の経験が整理されている方々でした。

今回のりぼらしごと体験で、社会復帰直前の患者さんと一緒に業務を進める機会をいただいたことで、患者さんが「自分たちが、企業側の期待に十分応えられるのか」を心配され、社会復帰にとても不安を抱えているということを知ることができました。

安心して社会復帰できるよう、承認していきたいと思って 5 日間を過ごしました。
ご本人たちは、仕事が前ほどできないと思っていて「申し訳ない」と話していましたが、これまでの経験からできることを一緒に見つけ、最終日には弊社にとって役立つ成果物を出していただきました。
復帰への一歩へ少しでも繋がったらと思い、報告会でのフィードバックでは、感謝の意とともに、今後どのように活用したいかお伝えしました。

りぼらのセミナーにて「中小企業の支援事例」を伺って

しごと体験以外にも、交流会(*注釈)へ参加し、そこで治療と仕事の両立支援に取り組まれている中小企業担当者の話を伺う機会もありました。そこで、会社として、病気になった後も継続して活躍してほしいと思っていても、従業員が自信をなくし「迷惑になっては申し訳ない、この会社に、自分がいてもいいのか?」と辞めることを考え、働く根底が揺らぐことがあるというお話しに驚いたとともに、制度や体制だけでなく、相互に対話できる環境づくりや心理的安全性の重要性を再確認しました。

 

(*)交流会:りぼら患者プログラムのセミナー3では、少し前に社会復帰したがん経験者の先輩と、中小企業にて実際に治療と仕事の両立支援を行った経験のある担当者にゲストとしてお越しいただき、それぞれの立場で、治療と仕事の両立について語っていただいています。

今後に向けて

今回の経験を通して、社内で治療と仕事の両立支援の仕組みを作っていく際に、復職に伴走するメンターが必要になると感じました。
何かあったときや仕事が辛くなった時などに、すぐ相談できる人をメンターとして任命しておくことで、安心して復職の支援を行えると思います。

それはキャリアコンサルタントがベストだと思いますが、社内には人数が限られているため、同性同士で年齢が近い人、普段から良好な人間関係が作れている人を候補に考えています。
今回のりぼらしごと体験で、りぼらのスタッフ(キャリアカウンセラー)が支援してくれたように、いつもそばで見守りながら終業時には「今日はどうでしたか?」と聞いてくれるような役割です。

「自分のことを理解してもらいたい」ということではなく、病気の治療により体力が落ちていたり、副作用で以前のようには仕事ができない体調になったことで「今まで通り働けない、貢献ができていない」と感じられ、組織の中で居づらい・・・・そういう気持ちがあることを初めて知りました。そういう人たちが安心して働ける環境を整えたい、と思った時に、「メンター」が必要だと考えたのです。

病気になった後も自分らしく働き続けられるよう、体調に合わせて辛いときには相談できる、そんな関係ができていてこそ、パフォーマンスを発揮してもらえますし、そのような社員がいることを周囲が見て、もしもの時にはお互い様だという風土も醸成していきたいと考えています。

身体も心もケアしながら自分のペースで働ける、そんな選択肢を設けることで復帰を伴走するメンターを置くことでメンター自身の学びにも繋がり、両立支援の取り組みが浸透していくと思います。

今後必ず治療との両立が必要な社員は出てきます。社員一人ひとりがこれまでと変わりなく自分らしく働き続けられるために、両立支援の制度の構築と風土の浸透を進めていきます。

私の父親が、仕事を続けていたことで前向きに治療に取り組めていたという経験から、治療を受けながら社会と関わり役割をもつことの大切さを実感しております。

今回のりぼらしごと体験での経験を通じて、復職した社員が仕事を辛いと感じたり、自分の居場所がないと感じてしまわないように、体調や副作用の状況に合わせて仕事を続けられるよう「病気になっても仕事を続けた方よい」から、「どうすれば仕事と両立していけるのか」という新たな視点で考えるよい機会になりました。

今回は一部の人しか関わっていないため、どのように導入することが社風に合うのかということも考えて、経営層や管理部門に関わってもらいながら一緒にガイドブックの作成を進めていきます。
そしてこの取り組みを、治療との両立だけでなく育児や介護との両立、ひいては障がいのある方など多様性を活かしつつも、お互いが協力することで全体として強みを発揮できるような一体性のある企業を目指していきます。