目次

皆さま、日頃より大変お世話になっております。JCDAの佐々木です。

7月25日(土)、PARM-CITY 131(仙台市青葉区)で開催されたJCDA宮城・山形地区会にお招きいただきました。

この日の仙台は、まだ梅雨明け前とのことで、かなり強い雨が降っていました。その分、夏の盛りとしては少し涼しく感じられました。街には若い方の姿が多く、伺ってみると、ちょうど乃木坂46のコンサートが開催されていたそうです。雨の中にもにぎわいを感じながら、会場へ向かいました。

今回のテーマは、

「CDAとしての『過去』『現在』『未来』をつなぐ
~CDAが共に歩む現在地と可能性~」

宮城、山形、そして秋田から、年代も仕事や活動の背景もさまざまな20名の皆さんが参加してくださいました。

社会の変化を「自分にとって」から考える

はじめに、私自身のことを、一枚の「私の金の糸」を使って紹介しました。

これまでの歩みの中には、思いどおりにならなかったことや、自分の力を十分に発揮できないと感じた時期もあります。しかし、今の自分の立ち位置から振り返ってみると、幼い頃から抱いてきた思いや、人との出会い、仕事の中で経験した出来事が、「金の糸」として少しずつつながっていることに気づきます。

経験とは、単に起きた出来事や事柄だけではありません。その中には、その人の思いや、大切にしているもの、その時に置かれていた状況や時代背景が含まれています。

誰かに語り、あらためて振り返ることによって、その経験が自分にとってどのような意味をもっていたのかが見えてくる。そして、その意味が、これからの生き方にもつながっていくことがあります。

続いて、JCDAの現在の取り組みとともに、キャリア支援を取り巻く社会経済情勢の変化についてお話ししました。

デジタル化やAIの進展、産業構造や働き方の変化、価値観の多様化。社会や仕事の流動性が増していく一方で、私たち一人ひとりの人生は長くなっています。

ただし、こうした変化を、社会全体の大きな話として聞くだけでは、自分自身のキャリアにはなかなかつながりません。

そこで参加者の皆さんには、

自分にとって、何が大切なのか。
何が問題なのか。
その変化には、自分にとってどのような意味があるのか。

というところに意識を向けて、考えていただきました。

これからどのように働き、生きていくのかについて、誰かが一つの正解を与えてくれるわけではありません。

自分自身の経験や価値観に向き合い、周囲の人と対話しながら、自分なりの選択を重ねていく。そこには、変化にただ対応するだけではなく、自分の人生を自分で引き受けていく生き方が求められているように思います。

同時に、変化と流動性が増す一方で長寿化していく社会を、私たちはどのようにつくっていくのか。CDAキャリアコンサルタントとして、その社会づくりにどのような役割を果たせるのかについても、思いを馳せていただきました。

期待を、実際の支援に変えられるか

社会の変化が大きくなり、一人ひとりの働き方や生き方が多様になる中で、キャリアコンサルタントに寄せられる期待は高まっています。

しかし、資格をもち、求められる役割を理解しているだけでは、社会の期待に応えたことにはなりません。

自分が実際の場で専門性を発揮できるか。
学んできたことを、目の前の人や地域のために生かせるか。

そこが問われているのだと思います。

一人ひとりが経験していることや、まだ十分に言葉になっていない思いを受け止め、組織や地域、社会にも届く言葉にしていく。

一方で、社会経済情勢や制度、組織の動きを、どこか自分とは離れた話として捉えるのではなく、それが目の前の人にとってどのような意味をもつのかを共に考え、その人自身の経験や価値観、生き方とのつながりを見いだしていく。

キャリア支援者には、個人と社会の間に立ち、一人ひとりが社会の変化を自分事として捉え、自らの生き方や選択と結びつけて考えられるよう支える役割があるのではないでしょうか。

また、すべてを一人で解決するのではなく、必要な人や情報、制度、学び、地域の活動へとつなぐことも大切です。

個人と組織、学びと実践、人と人、地域と社会。その間につながりをつくることによって、新しい選択肢や経験が生まれます。

複雑さを扱うための専門性と倫理

当日は、CDAの専門性とともに、倫理についてもお話ししました。

社会やキャリア支援を取り巻く環境の変化を踏まえ、2024年に「キャリアコンサルタント倫理綱領」が改定されました。

その背景の一つには、企業をはじめとする組織の中でキャリア支援が普及してきたことがあります。

個人へのキャリア相談だけでなく、研修や人事施策、組織づくりなどとキャリア支援が結びつく中で、相談者、支援者、組織、人事部門、依頼者など、複数の関係者がかかわる機会が増えています。

誰のための支援なのか。
誰に対して、どのような責任を負っているのか。
相談の中で得られた情報を、誰と、何のために共有するのか。
蓄積された情報やデータを、どのように活用するのか。

関係性の整理や、データの取り扱い、その活用方法は、これまで以上に複雑になっています。

しかし、倫理は、キャリア支援者の活動を狭めるためだけのものではありません。

相談者の尊厳やプライバシー、自己決定権を守りながら、複数の関係者との関係を適切に整理し、相談を通して得られた情報やデータを、本人の理解と同意のもとで適切に取り扱うことができれば、キャリア支援者の活躍領域はさらに広がります。

複雑さを避けるのではなく、専門性と倫理をもって誠実に向き合うことが、社会からの信頼を高め、新たな実践の可能性をひらいていくのだと思います。

「CDAは資格ではなく、生き方」

後半は、ワールドカフェ形式の「夢カフェ」を行いました。

自分がCDAやキャリアコンサルタントを目指したきっかけを振り返り、現在の活動で大切にしていることや課題を見つめ、これから実現したいことを語り合いました。

グループのメンバーを替える「他花受粉」を挟みながら対話を重ねる中で、キャリアコンサルタントが国家資格化される以前にCDAを取得された方から、

「CDAは資格ではなく、生き方です」

という言葉が語られました。

CDAとして学んだことは、仕事として相談を受けるときだけに使うものではありません。日々の人とのかかわり方や、自分自身の生き方につながっているからこそ、「資格ではなく、生き方」という言葉になったのだと思います。

誰かに自分の人生の答えを決めてもらうのではなく、自分の経験や思いに向き合いながら、自分の人生を引き受けていく。そして、他者が自分の人生を引き受けていくことを、自分の価値観を押しつけることなく支えていく。

長くCDAとして歩んでこられた方の言葉だからこそ、深い重みをもって場に届いていました。

参加者からは、

「CDAだからこその傾聴や受け止めがある場だった」

という振り返りもありました。

年代も経験も異なる皆さんが、相手の話を評価したり、すぐに助言したりするのではなく、まずはその人の経験や思いに耳を傾ける。

語られた言葉だけでなく、その背景にある思いにも心を寄せる。

そうしたCDA同士のかかわりがあるからこそ、安心して自分を語り、さらに自分自身を振り返ることのできる場になったのではないでしょうか。

夢カフェから、新しい経験を生み出す

私からは、夢カフェが「経験代謝」の構造をもとにつくられていることもお伝えしました。

過去の経験や原点を振り返り、現在の自分にとっての意味を見いだし、それを未来へとつないでいく。その過程を、一人で考えるのではなく、仲間との対話を通して深めていく場です。

夢カフェは、地域で暮らす市民の皆さんが、それぞれの経験や今感じていること、これから願っていることを語り合う場としても、さまざまに応用することができます。

CDAが地域の中で対話の場をひらき、人と人をつなぐ。そこから、新しい活動や経験が生まれていく可能性があります。

学びは、研修や勉強会の中で一方的に受け取るだけで完結するものではありません。自分の仕事やこれまでの経験、暮らしている地域、興味や関心のあるテーマとつなげることで、実践への糸口が見えてきます。

関心の近い仲間と話してみる。地域で行われている活動に参加してみる。自分たちにできる小さな対話の場を開いてみる。

そうして、一人の学びが誰かの学びへと広がり、新たな実践の機会を生んでいくのだと思います。

すべての準備が整うまで待つのではなく、まずは小さな一歩を踏み出してみることを、皆さんにお伝えしました。

「やってみたい」を、一緒に考える地区会へ

今回は、宮城・山形地区会の地区長が交代する、大切な節目の機会でもありました。

6月末で任期を終えられた前地区長の大場綾さんからは、2年間の活動を振り返り、「のびのびと活動することができた」とのお話がありました。

何かやってみたいことや、思いついたアイデアをJCDAに提案すると、最初から「だめ」と言われるのではなく、どうすれば実現できるかを必ず一緒に考えてもらえたことが語られました。

その経験を踏まえ、地区会の皆さんに、

「自分の中にある思いや提案を、ぜひ言葉にしてみてほしい」

と投げかけておられたことが、とても印象に残りました。

新しい地区長の三井英治さんは、複数の地域に生活の拠点をもち、仕事を含めてさまざまな活動に取り組んでおられます。そうした経験や地域とのつながりを生かし、宮城・山形の皆さんのために取り組んでみたいことや、いくつものアイデアをお持ちであることが伝わってきました。

宮城・山形地区会には、500名近い会員がいます。

一人ひとりが異なる年代、経験、専門性、関心、地域とのつながりをもっています。それらが出会い、結びつくことで、まだ見えていない多くの可能性が生まれるはずです。

宮城・山形地区会の皆さんと新しい経験を共につくり、その経験を共に振り返りながら、また一緒に成長していきたいと改めて感じました。

ご準備くださった宮城・山形地区会の皆さま、共に考え、語り合ってくださった参加者の皆さま、本当にありがとうございました。

次回はぜひ山形で、また皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

JCDA理事長 佐々木 好

 

▼参考

JCDAの支部・地区会について

JCDAには、全国に9つの支部と33の地区があります。支部・地区会は、各地で会員が集い、学び合い、語り合い、実践につなげていくための地域活動の場です。

その活動は、各地域の支部長・地区長をはじめ、幹事や運営に関わる会員の皆さんのボランティアによって支えられています。同じ会員の立場から、地域の仲間が安心して集い、学び続けられる場をつくるために、時間と力を寄せてくださっています。

入会や資格取得を一つの節目に、地域の仲間と出会い、自分自身の経験を振り返り、それぞれが自分なりの軸を大切にしながら、学び、成長していく。そのような継続的な学びとつながりを支えているのが、支部・地区会の活動です。