日本キャリア開発協会理事長
大原 良夫
今、日本社会は政府が主導する「働き方改革」の波を受けて、大きな変革を迎えようとしています。この動きに呼応するように、平成28年4月に職業能力開発促進法が改定され、労働者のキャリア支援に当たって、キャリアコンサルティング、キャリアカウンセリングが重要な役割を果たすことになりました。併せて、同月にスタートした国家資格キャリアコンサルタント制度は、専門家としての職業的地位の確立に大きく寄与するものです。
こうした背景を踏まえ、キャリアコンサルタント登録試験機関および更新講習実施指定機関である日本キャリア開発協会は、国のキャリアコンサルティング施策の一翼を担う社会的存在として責務があります。
本協会は設立の基本理念「キャリアカウンセリング機能を社会システムとして具体化する」をスローガンに活動を重ねて参りました。その目的は「成熟した社会」への発展、維持にあります。そのためには社会と個人を有意義につなぐことができるキャリアカウンセラーの輩出、育成と、キャリアカウンセリングの場の確立そしてキャリアカウンセリングが普及するための社会的仕組みが必要です。
そして、さらに強調したいことは、本協会はキャリアカウンセリングを推進、展開する上で、「人の内的成長」を支援する「カウンセリング」の基本的考え方をもとに、さまざまな活動、能力開発支援を行っていることです。こうした考え方は、キャリアカウンセリングの旧来の考え方に大きな変化を及ぼすと考えています。すなわち「問題解決志向」モデルから「成長開発志向」モデルへの転換です。つまり、すべての人間が成長しようとするなら、キャリアカウンセリングの対象者は「問題を抱えた人」だけでなく、すべての国民がキャリアカウンセリングを受ける権利があるということです。こうした考え方の支援によって初めて、国民一人ひとりが成長を実感し、有意義で意味ある人生や仕事に取り組むことができたとき、本当の意味で我々は「成熟社会の一歩」に立ったことになるのではないでしょうか。
21世紀のキャリアカウンセリングのあるべき姿を目指して、さまざまなキャリアカウンセリング普及活動と併せてキャリアカウンセリングの質の向上を今後とも目指していく所存でございます。今後の皆様からのご支援よろしくお願い申し上げます。