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2025年6月24日、一般社団法人 社会的健康戦略研究所が開催する定期会合に参加しました。今回は、健康経営実践担当者ユニットと経営コンサルユニットの合同会議で、「健康経営推進をウェルビーイング経営の視点で再構築する」というテーマで実施されました。

企業の人事担当者、健康経営推進担当者、産業保健スタッフ、コンサルタントなどが集い、実践の現場からのリアルな声を共有。多様な立場から交わされた対話を通じて、「健康」と「経営」をつなぐ取り組みが、いままさに転換点を迎えていることが浮かび上がりました。

健康経営は「担当者任せ」から「組織全体の取り組み」へ
多くの企業で健康経営が推進されている一方、その中身は「健診」や「運動促進」など、個人の努力や一部の担当部署の尽力に頼っている側面も少なくありません。特に「健康経営」と「経営戦略」が乖離しているケースでは、トップの理解が不十分なまま、担当者が現場で孤軍奮闘しているという実情が共有されました。

「健康」は“からだ”だけじゃない──社会的健康と心理的安全性
WHOの定義にもあるように、「健康」とは身体的・精神的に満たされているだけでなく、“社会的に満たされていること”も含まれます。これは、仲間の存在や自分の居場所、対話できる関係性など、組織文化や人間関係に深く関わるものです。

参加者のひとりはこう語りました。
「健康を望まない人はいないはず。でも、それを妨げているのは、環境や文化の影響があるのかもしれない。」

健康経営の進化系ともいえる「ウェルビーイング経営」は、こうした“見えにくい課題”へのアプローチが大きなカギとなります。

三本柱で支えるウェルビーイング経営
会議では、健康経営・ウェルビーイング経営を実践していくために、以下の「三本柱のマネジメント」が提案されました。

・セルフマネジメント(個人の健康)
・組織マネジメント(関係性・心理的安全性)
・キャリアマネジメント(自律的な働き方)

この三つをバランスよく実施することで、単なる制度導入にとどまらず、創造性や変化への適応力が高まる「しなやかな組織」づくりが可能になるという見解が共有されました。

「対話」から始める経営の転換
「健康経営がマンネリ化している」「施策が現場の隅々まで届かない」といった声も多く聞かれました。こうした課題を乗り越えるためのキーワードとして挙げられたのが、「対話による合意形成」です。

組織としてどんな未来を目指すのか。そこにいる一人ひとりは、どんな価値を大切にしているのか──。こうした問いを共有しながら共通の方向性を探る「コモングラウンド」の形成が、ウェルビーイング経営の実装に欠かせない視点であると強調されました。

施策の“棚卸し”と“つながり直し”
今回の対話会では、今後のアクションとして次のような方向性が共有されました。

・社内の健康・人事・キャリア関連施策の棚卸し
・「コモングラウンド」づくり
・キャリア自律を支える面談・相談体制の普及
・新規事業や組織改革とウェルビーイングの連携

また、新しい施策を次々と増やすのではなく、すでにある制度や仕組みを「つなぎ直す」こと。これにより、点在していた取り組みが相乗効果を生み、健康経営は“経営の中核”として再定義されていきます。

健康はすべての出発点
今回の対話を通じて何度も語られたのは、「健康であることが、すべての出発点である」ということでした。

キャリアも、業績も、イノベーションも、人がいきいきと働ける環境があってこそ実現できるもの。これからの健康経営・ウェルビーイング経営は、制度ではなく文化として組織に根づいていくことが求められています。

JCDAも、健やかな未来づくりの伴走者として
私たちJCDAが推進しているキャリアカウンセリングもまた、こうしたウェルビーイングの文脈と深く結びついています。人と組織が「ありたい自分」「目指したい未来」に向かって進んでいけるよう、これからも多様な現場の声に耳を澄ませながら、伴走してまいります。