皆さま、日頃より大変お世話になっております。JCDAの佐々木です。
6月27日に、JCDAは第27回通常総会を迎えます。
昨年、理事長という役割を引き受けてから、早いもので1年が経とうとしています。
総会を前に、これからのJCDAについて考えていた時、改めて自分自身に問いかけていました。
「私たちは、何を大切にして次の世代へ手渡していきたいのだろうか」
その問いのきっかけは、最近、子ども向けのキャリア教育について話し合う機会があったことでした。
忙しい学校現場で、子どもたちにキャリアについて考えたり学んだりする場を提供するには、さまざまな工夫が必要とのことでした。
一方で、私はその話を聞きながら、別のことを考えていました。
人が自分の経験を語ること。
そして、それを誰かが受け止め、耳を傾けること。
そこには、その人の人生を変えるようなインパクトがあるのではないか。
そんなことを考えていた時、ふと自分自身のある経験を思い出しました。
私は小学生の頃、手先を動かして何かを作ることが大好きな子どもでした。
お小遣いを貯めて手芸用品を買い、図書館で借りた本を見ながら、ビーズのアクセサリーや人形を作ったり、フェルトで小さなマスコットを縫ったりしていました。
染色用の粉を買って和紙を染め、その紙を表紙に貼って手帳を作ったこともあります。
今ではほとんどそんなことはしませんが、当時は本当にいつも何かを作っていました。
そんなある日、テレビで伝統工芸の和傘職人のご夫婦が取材を受けている番組を見ました。
安価なビニール傘が広がり、伝統的な和傘は次第に使われなくなっていく時代でした。
そのご夫婦は、お子さんには後を継がせない、と話していました。
継がせたくないのではなく、継いでも生活していけないだろうという現実を受け止めておられるようでした。
その時のお二人の寂しそうな表情が、なぜか強く心に残りました。
そして私は子どもながらに、
「じゃあ私が継ぐ」
と思ったのです。
もちろん本当に職人になろうという覚悟があったわけではありません。
けれども今振り返ると、私は和傘そのものよりも、大切に受け継がれてきた技術や文化、人々の想いが失われてしまうことへの寂しさに反応していたのだと思います。
この話は長い間、私にとってただの思い出でした。
ところがある時、JCDAの同僚が聞き手となって私の話を聴いてくれたことで、その意味がまったく違って見えてきました。
私はその時初めて、
「大切なものを未来へつなぎたい」
という思いが、子どもの頃から自分の中に流れていたことに気づいたのです。
そして驚いたことに、その感覚は今の仕事にもつながっていました。
キャリアカウンセリングという営み。
経験代謝という考え方。
そして、多くの先人たちが育ててきたJCDAという組織。
小学生だった私は、その後の自分がキャリアカウンセリングに携わることになるとは思ってもいませんでした。
JCDAに入職することも、今の役割を担うことになることも想像していませんでした。
けれども今振り返ると、あの時感じた思いは、形を変えながら私の中に流れ続けていたように思います。
スティーブ・ジョブズ氏は、スタンフォード大学の卒業式のスピーチで「Connecting the Dots(点と点をつなぐ)」という言葉を残しました。
未来を見通して点をつなぐことはできない。
振り返った時に初めて、それぞれの出来事が意味を持ってつながって見える。
人生すごろく金の糸も、まさにそんな体験を大切にしています。
子どもの頃に夢中になったこと。
思いがけず頑張ったこと。
悔しかった経験。
人との出会い。
忘れていたような出来事。
一つひとつはバラバラの経験です。
しかし、それらを安心安全の場で語り、誰かに聴いてもらう中で、
「ああ、自分は昔からこういうことを大切にしていたんだ」
と気づくことがあります。
キャリア構築理論を提唱したマーク・サビカス博士は、人は自分の人生を物語として意味づけながら生きている、と語りました。
私たちは出来事そのものによって生きているのではなく、その出来事をどう意味づけるかによって、自分らしさを形づくっています。
JCDAが大切にしている「経験代謝」も、まさにその営みです。
経験を語り、聴いてもらうことで、自分でも気づいていなかった意味が見えてくる。
そして、その気づきが、その人らしい生き方や働き方につながっていく。
私は、その瞬間やプロセスに何度も立ち会ってきました。
JCDAの立野会長は、「人生すごろく金の糸」の命名にあたり、
「経験を振り返ることで見えてくる“自分らしさのつながり”は、何より価値ある金の糸ではないでしょうか」
と語っています。
私自身、この言葉の意味をJCDAでの経験を重ねるごとに実感するようになりました。
理事長という役割を担った今、組織を守ることだけでなく、その価値を次の世代へ手渡していくことも、自分に託された役割の一つだと感じています。
もちろん、ただ受け継げばよいというものではありません。
人から人へ手渡される中で、その価値は少しずつ姿を変え、新しい意味を持ちながら育っていきます。
私自身もまた、多くの人との出会いや対話を通して成長してきました。
そしてJCDAという組織も、多くの会員やご支援くださった皆さまとの経験を通して成長し続けています。
人生は、未来から見ることはできません。
けれども振り返ると、そこには一本の糸が通っていたことに気づくことがあります。
年を経て変わっていくものもありますが、何年たっても変わらないものがあります。
その糸は最初から見えていたわけではありません。
語り、聴き合い、ともに振り返る中で少しずつ見えてくるものです。
そして振り返った時に初めて、
「ああ、自分はこれを大切にして生きてきたんだ」
と気づくことがあります。
「振り返ったら、金の糸」。
その糸が、自分にとって価値ある「金」だったことに気づくのです。
人が自分の経験を語り、人がそれを聴くこと。
その対話の中で、その人自身も気づいていなかった可能性や意味が見えてくること。
私は、その営みこそがキャリアカウンセリングの価値であり、私たちがこれからも社会に手渡していきたいものだと思っています。
私自身もまた、自分の人生に流れる金の糸をたどりながら、JCDAという組織とともに成長し、その価値を未来へ手渡していきたいと思っています。
JCDA理事長 佐々木 好




