皆さま、日頃より大変お世話になっております。
JCDAの佐々木です。
先日、APCDA 2026 Malaysia Hybrid Conferenceのオンラインパネルセッション “How inclusive is inclusion?” に参加したことを、ブログでご報告しました。
参考▼
「インクルージョンはどこから始まるのか」― APCDA国際パネルで考える多様性
APCDA(Asia Pacific Career Development Association)は、アジア太平洋地域を中心に、キャリア開発に関わる実践者、研究者、教育関係者が集い、学び合う国際的なネットワークです。アメリカやカナダなど、アジア太平洋地域外からの参加者もいます。
2026年の大会は、マレーシアのUniversiti Malayaをホスト会場として、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド形式で開催されました。
私が最後にAPCDA大会に参加したのは、2018年に中国・北京のTsinghua Universityで開催された大会でしたので、コロナ禍を経て、実に8年ぶりの現地参加となりました。
大会テーマは、“Inclusive Career Development in Global Transitions”。
変化の大きい時代において、誰もが取り残されることなく、自分らしく働き、生き、社会に参加していくために、キャリア支援者は何ができるのかを考える大会でした。
▼大会詳細
2026 APCDA Hybrid Conference
今回、私があらためて強く感じたのは、やはり現地に足を運ぶことの意味です。
オンラインであれば、時差はあっても世界中の仲間と気軽につながることができます。移動の負担も少なく、忙しい中でも参加しやすいという大きな利点があります。実際、今回のオンラインパネルでも、国や地域を越えて多様な意見を聞くことができ、大変貴重な経験となりました。
一方で、現地参加には、オンラインでは得がたいものがあります。
今年は、スカラシップで参加している学生も含めて(※)、おそらく200名弱ほどの参加者がいらっしゃったのではないかと思います。
(※)APCDAでは、今年度の募金活動を通じて、100名を超える奨学生が大会から学びを得られるよう支援することができたそうです。JCDAも、少しではありますが寄付をさせていただきました。
- 会場に入ったときのエネルギーに満ちた空気感
- 久しぶりに再会する海外の仲間との握手や笑顔
- 様々な文化的背景を感じる衣装
- セッション後の短い立ち話や、スタッフへの感謝と労い
- 昼食やティータイムで、「同じ釜の飯を食う」幸せ
- 教室の移動の合間に交わされる、何気ない会話やジョーク
- 初めて会った方と、名刺を交換したり挨拶をかわしたりしながら、少しずつ距離が縮まっていく感覚
そうした一つひとつのやりとりの中に、国際的なネットワークが「情報交換」だけではなく、人と人との関係性によって育まれていることを、あらためて感じました。
特にAPCDAは、アジア太平洋地域を中心としたキャリア開発に関わる人たちが、比較的近い距離感で交流できる場です。大きな国際会議でありながら、どこか温かさがあり、互いの実践を尊重しながら学び合う雰囲気があります。
英語でのやりとりには緊張もありますが、参加者は英語を母国語とする方ばかりではありません。完璧に話せるかどうかよりも、身振り手振りも交えながら、相手に好意的関心を持つこと、そして自分の実践を誠実に伝えようとすることが大切なのだと感じました。
今回の大会テーマは、Inclusive Career Development in Global Transitions。
インクルージョン、障がい者雇用、ニューロダイバーシティ、社会保障とキャリア開発、AI時代の働き方、若者支援、リスキリングなど、非常に幅広いテーマが扱われました。
印象的だったのは、どのセッションにおいても、キャリア開発を「個人の努力」だけに閉じ込めず、教育、雇用、政策、地域社会、企業、テクノロジーを含めた「エコシステム」として考えようとしていたことです。
「本人がもっと頑張ればよい」という話ではなく、社会や組織の側にある壁をどう変えていくのか。
「就職できたかどうか」だけではなく、その人が希望や尊厳を失わず、学び続け、働き続けられる仕組みをどうつくるのか。
そのような問いが、さまざまな国の文脈から語られていました。
個別のセッション内容や、そこから考えたことについては、今後少しずつご紹介していきたいと思います。
今回、JCDAからは、浅賀桃子さんと大井芳暢さんによる “Golden Thread Sugoroku: A Japanese Narrative Career Game for Self-Reflection and Dialogue” のワークショップも実施されました。
これは、「人生すごろく金の糸アワード2025」において企画部門の大賞を受賞した取り組みです。
JCDAが開発した「人生すごろく『金の糸』」を英語版として紹介し、参加者が自分の経験を振り返りながら、その中に通底する大切な価値観に気づいていく場をつくりました。
参考▼
人生すごろく金の糸アワード2025
企画部門大賞
APCDAマレーシア大会における人生すごろく「金の糸」国際紹介ワークショップ
「金の糸」については、これまでもオンラインなどで日本の取り組みが紹介され、国境を越えて、多くの方々に興味を持っていただいていました。今回、実際に多様な文化的背景を持つ参加者と対面でワークショップを開催できたことは、大きな意味があったと思います。

「金の糸」は、すごろくゲームという親しみやすい形式をとりながら、人が自分の学生時代の経験を語り、他者に聴いてもらい、その中にある意味を見出していく実践です。言葉や文化が異なっても、人が自分の人生を振り返り、自分の中にある大切なものに気づいていくプロセスには、共通するものがあるのだと感じました。
今回の大会で使用した英語版の「金の糸」のゲームキットは、まずはプロトタイプとして制作したものです。
今後、国内でもトライアルを重ねて検証しながら、近い将来の販売も視野に入れていきたいと考えています。
また、今回の大会では、あらためて「キャリア開発は世界共通のテーマである」と感じました。
もちろん、国によって制度も文化も労働市場も異なります。けれども、人が変化の中で迷い、自分の役割を探し、学び直し、社会とのつながりを見出していくという営みは、どの国にもあります。そして、そのプロセスを支えるキャリア支援の専門家同士が出会い、学び合うことには、大きな意味があります。
私自身、今回のAPCDA参加を通じて、日本のキャリアカウンセリングやCDAの実践を、もっと海外の仲間にも伝えていきたいと感じました。同時に、海外の実践から学ぶことも、まだまだたくさんあります。
国際大会というと、少しハードルが高く感じられるかもしれません。英語での発表や交流に不安を感じる方も多いと思います。海外生活や留学の経験がない私自身も、その一人です。あらかじめ準備した原稿がないと、発信もままなりません。
しかし近年は、生成AIの発達もあり、多言語で資料を作成することがずいぶん容易になりました。私たちの日頃の取り組みや実践は、他の文化圏にいる誰かにとって、ものすごく新鮮だったり、深い共感を呼んで力づけることになったりもします。
今回も、日本の企業での実践や、女性支援の事例などを発信されている仲間がいて、とても心強く感じました。
現地に行ってみると、完璧な英語で堂々と話すことだけが国際交流ではないことがわかります。
相手の話を聴くこと。
関心を持って質問すること。
自分の実践を、少しでも伝えようとすること。
そして、同じキャリア開発に関わる仲間として時間を共にすること。
そこから始まる交流があります。
ぜひ、CDAの皆さんにも、いつかAPCDAをはじめとする国際大会に参加していただきたいと思います。
海外の実践に触れることは、自分たちが日本で大切にしてきたものを、別の角度から見つめ直す機会にもなります。
もちろん、オンライン参加でも十分に刺激を受けることができます。
今後予定されている主な国際大会としては、以下のようなものがあります。
2026 NCDA Global Career Development Conference
2026年6月30日〜7月2日
アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス
IAEVG International Conference 2026
2026年11月25日〜27日
ニュージーランド・オークランド
また、次回のAPCDA大会は、2027年にシンガポールで開催予定です。
2027年は、対面開催が先で、その翌週がオンラインのハイブリッド形式を予定しているそうです。
キャリア支援の世界は、確実に国境を越えてつながっています。
そして、私たちCDAが大切にしてきた、「一人ひとりの経験に耳を傾け、その人らしい成長を支える」、「人と人、人と社会のつながりを深める」という実践も、世界のキャリア開発の文脈の中で、十分に共有できる可能性があると感じています。
今回のAPCDAでの出会いと学びを、今後のJCDAの活動にも活かしていきたいと思います。
そして、これからもCDAの皆さまとともに、日本のキャリアカウンセリングの実践を深め、国内外に向けて発信していければと思います。
現地で温かく迎えてくださったAPCDAおよびUniversiti Malayaの皆さま、各国から参加されたキャリア開発の仲間たち、そして「金の糸」英語版ワークショップの準備・実施に尽力くださった皆さまに、心より感謝申し上げます。




