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皆さま、日頃より大変お世話になっております。JCDAの佐々木です。

8月3日・4日の2日間、各日13時から17時30分までの半日プログラムとして、多摩大学経営情報学部・葛本幸枝ゼミの3年生10名の皆さんにご協力いただき、「共に生きる~私の世界、世界の私について~」学生版のトライアルを実施しました。

進行は、JCDA認定スーパーバイザー・インストラクターの加藤貴美子さんと堀上晶子さんが担当し、私を含むJCDA職員・CDA計6名も参加しました。なお、葛本先生も、CDAとして活動する私たちの大切な仲間です。

葛本ゼミでは、「コミュニティを活用したキャリア形成」をテーマに、「どう生きるのか」を考え、自らの行動変容につなげる学びを大切にされています。身近な課題を扱った企画や社会人へのインタビューなどを通じて、自他理解や仕事理解を深め、対話する力、他者と共に新しい価値を生み出す力を育むゼミです。今回のトライアルは、そうした葛本ゼミの学びとも深く重なる機会となりました。

自分の心の声を、どれくらい聴いているだろう

いまは、知りたいことがあれば、インターネットやAIに問いかけることで、たくさんの情報や、それらしい答えを得ることができます。

では私たちは、自分自身には、どれくらい問いかけているでしょうか。

  • 自分は何を感じているのか。
  • なぜ、その出来事が心に残っているのか。
  • 何を大切にし、これからどのように生きていきたいのか。

これから就職活動を迎える学生の皆さんは、自分のことを振り返り、言葉にする機会が増えていきます。

自分の経験を振り返り、誰かと語り合うことを通して、自分を知り、他者を知り、自分と社会とのつながりを見つめる。今回のプログラムでは、そのような時間を学生の皆さんと共につくることを目指しました。

学生の皆さんには、事前課題として「最近ワクワクした経験・モヤモヤした経験」、「私をとりまく世界」をご用意いただきました。

初日は、自己紹介を含むオリエンテーションの後、人生すごろく「金の糸」を使って、それぞれの経験を語り合いました。続いて、他者の立場に身を置き、その人から見える世界を想像するワークに取り組みました。

2日目は、自分が社会の中で感じている違和感や、気になっている出来事を持ち寄りました。そして、社会で起きていることを、自分とは無関係な外側の出来事として見るのではなく、「自分を含む世界」の出来事として考えていきました。

経験は、語ることで新しい意味を持つ

このプログラムの土台にあるのは、JCDAがキャリアカウンセリングで大切にしてきた「経験代謝」です。

人は、何かを経験しただけで、自動的にそこから学ぶわけではありません。

自分の経験を語り、それを誰かに関心を持って聴いてもらう。問いかけやフィードバックを受けながら、そのときの心の動きや、自分が大切にしていたものに気づいていく。そうして経験の意味を捉え直すことで、自分自身や、自分を取り巻く世界の見え方が少しずつ変わっていきます。

今回の学生版も、経験を語り合うことを通じて自己理解・他者理解を深め、自分と社会とのつながりに意識を向けることを目的として設計しました。社会の出来事を自分の関心や価値観、経験と結びつけ、「自分を含む世界」へと取り込んでいくことも、経験代謝の考え方とつながっています。

このように書くと、少し難しいことをしているように聞こえるかもしれません。

けれど、実際に起きていたことは、もっと自然で、温かなものでした。

学生の皆さんが、私たちに与えてくれたもの

学生の皆さんが語ってくれた具体的な内容は、ここでは紹介しません。

安心して語り合う場で交わされた言葉であり、そこには一人ひとりの大切な経験が含まれているからです。

ただ、学生の皆さんは、ご自身が私たちにどれほど大きな影響を与えたかを、きっとまだご存じないのではないかと思います。

何気なく発せられた一言に、こちらがハッとさせられることがありました。
率直で、ときにとても鋭い視点に、私たちが考えさせられる場面がありました。

初めは少し距離のあった学生同士が、相手の経験を聴くうちに、関わり方を少しずつ変えていく様子も見られました。話しにくそうにしている人を気遣ったり、相手が話し始めるのを待ったり、その人のことを理解しようとしたりする姿に、心を動かされました。

すぐには言葉が出てこなくても、立ち止まり、考えながら、自分の思いを一つひとつ言葉にしていく。その姿にも、胸を打たれました。

開始した頃には、緊張もあって、少し照れたり、場を和ませて笑いに変えるような反応を見せたりしていた学生の皆さんも、対話を重ねるにつれて、ふとした瞬間に真剣に考える表情を見せるようになりました。

そして、その真剣さに促されるように、私たち大人も(ちなみに、私たちも学生の皆さんと同様に最初は緊張していました)、役割や世代の違いを離れ、自分自身の経験や感じていることを、飾らずに語るようになっていきました。

学生に何かを教えるために大人が参加しているのではない。
学生と大人が同じ場に身を置き、互いの経験に関心を向け、影響を与え合っている。

それは、理論や説明を超えたところで、心を動かされる経験でした。

2日間の最後には、全員で集合写真を撮りました。

少し緊張しながら始まった2日間でしたが、撮影の時間には、学生の皆さんが明るく、楽しい雰囲気をつくってくれました。どのように並ぶか、どんな表情で撮るか。自然に声を掛け合いながら、その場を盛り上げてくれる様子に、私たちもすっかり笑顔になりました。

そして、退出の時間が近づくと、「机の片づけを手伝います」と声をかけてくれました。最後には全員で並び、私たちに丁寧にお辞儀をして、「ありがとうございました」と伝えてくれました。

対話を重ねる中で、一人ひとりが、悩みや迷いも含めたそれぞれの歩みを経て、今ここにいるのだということも伝わってきました。そうした皆さんが、目の前にいる人を気遣い、相手のために自分にできることをしようとする。その優しさが、言葉だけでなく、最後の振る舞いからもまっすぐに伝わってきました。

その姿を見ながら、私たちCDAも、思わず胸がいっぱいになりました。
深い感謝とともに、皆さんのこれからを心から応援したいと思いました。

実施後の振り返りでも、「こちらが学ばせてもらった」「学生の言葉が、想像以上に大きな示唆になった」という声が、参加したCDAから次々と語られました。学生の皆さんがトライアルに参加し、率直な反応を返してくれたこと自体が、これからこのプログラムに出会う人たちへの大切な貢献になっています。

4日間の「共に生きる」から生まれた学生版

今回の学生版の源流には、JCDAが一般の方を対象に実施している4日間のプログラム「共に生きる~私の世界、世界の私について~」があります。

この4日間では、キャリアカウンセリングの考え方をベースに、対話を通じて自分自身や他者、社会への理解を深めていきます。自分を取り巻く世界が「他人事の世界」から「自分を含む世界」へと変わっていく過程を大切にし、自分らしく生きること、他者と共に生きること、社会の中で自分に何ができるかを考えていくプログラムです。

「共に生きる~私の世界、世界の私について~」4日間プログラム(JCDA)

4日間だからこそ、立ち止まり、語り、考え、次の回までの日常を過ごす中で生まれる深まりがあります。

学生版は、その4日間を単純に短くしたものではなく、「共に生きる」が大切にしてきた経験代謝の考え方を土台としながら、学生が入りやすい「金の糸」を入り口に、専門的な概念をできるだけ使わず、問いと対話によって自分、他者、社会とのつながりを考えられるよう、半日ずつの2日間に再構成しました。

4日間版の本質を受け継ぎながらも、学生版・2日間版だからこそ生まれる体験とは何か。それを確かめることも、今回のトライアルの大切な目的でした。

もちろん、今回で完成したわけではありません。

使う言葉は学生に十分伝わっていたか。
一つひとつのワークは、どのようにつながっていたか。
どこに、もう少し時間をかける必要があるか。
大人がグループに入ることには、どのような意味があるのか。

学生の皆さんからいただくアンケート結果やフィードバックと、参加したCDAによる振り返りをもとに、さらに検討を重ねていきます。

学生のために、そして大人のために

今回のトライアルは、学生の皆さんのために開発したプログラムでした。

けれど、2日間を終えて、私は、このような経験を必要としているのは学生だけではないと感じました。

  • 年代や立場の異なる人と、評価や正解を求めずに、自分の経験を語り合う。
  • 自分とは違う人が見ている世界に触れる。
  • 社会の中で起きていることを、自分の経験や心の動きと結びつけて考える。
  • 誰かが懸命に言葉を探す時間に居合わせ、その言葉に心を動かされる。

このような経験は、私たちCDAにとっても、そして日々忙しく働く多くの大人にとっても、大切なものではないでしょうか。

「学生のために何ができるか」と考えて参加した私たちが、学生の皆さんから多くのものを受け取り、自分自身を振り返ることになりました。

学生と大人を、教える側と教えられる側、支援する側と支援される側に分けるのではなく、一人の人間として同じ場に集い、互いの経験に耳を傾ける。

その時間自体が、「共に生きる」ということの一つの姿だったように思います。

教育機関の皆さまと、次の場をつくりたい

今回、多摩大学・葛本ゼミの皆さんとこの場をつくることができたのは、日頃から葛本先生が学生一人ひとりと関わり、対話し、安心して学び合える関係を育んでこられたからでもあります。

同じプログラムを、そのまま別の学校へ持っていけば、同じことが起きるわけではないでしょう。

それぞれの学校に、それぞれの学生がいます。学年や関係性、学んでいること、置かれている状況も異なります。

だからこそ、完成したプログラムを一方的に提供するのではなく、その教育機関の皆さまと、何を大切にしたいのかを話し合いながら、共に場をつくっていきたいと考えています。

大学のゼミやキャリア教育をはじめ、さまざまな教育の場で、学生と大人が自分の経験を語り、互いに影響を与え合う機会を広げていきたい。

そして、そこで生まれたものを、また次の場へとつないでいきたい。

今回参加してくださった学生の皆さんの言葉や姿は、すでに私たちの中に残り、学生版「共に生きる」のこれからを動かし始めています。

葛本幸枝先生、葛本ゼミの3年生10名の皆さん、そして企画・進行に力を尽くしてくださった皆さんに、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

皆さんと過ごしたこの2日間を大切に受け取り、次の「共に生きる」の場へと育ててまいります。

JCDA理事長 佐々木 好

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