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2025年6月25日(水)、韓国・ソウル市に本部を置く「50プラス財団」の代表団5名が、日本キャリア開発協会(JCDA)を訪問されました。
今回の訪問は、ソウル市におけるミドルシニア層(概ね40代後半~60代前半)のキャリア支援政策や制度の構築に向け、日本の取り組みを学び、今後の事業展開に活かすことを目的としたものです。

JCDAの紹介と理念──「キャリアとは人生そのもの」

冒頭では、JCDA事務局より、協会の概要と理念についてご紹介しました。
JCDAは2000年に設立されたNPO法人で、全国に約22,000名の有資格者(CDA・キャリアコンサルタント)が所属し、教育・企業・行政・地域など、さまざまなフィールドでキャリア支援を展開しています。

とくに私たちは、「キャリア=人生全体」と捉える立場から、相談者一人ひとりの「内的キャリア」(価値観・意味・ありたい姿)に焦点をあて、対話による自己理解の促進、自分らしさの発揮、環境との相互作用を通じた成長を支援の核としています。
相談者の経験を起点に自己理解を深める「経験代謝」の考え方に基づき、助言や指導ではなく、対話によって人生の物語を再構築していくスタンスについてもご紹介しました。

ソウル市の課題共有:「50歳からのキャリア」をどう支えるか

韓国側からは、次のような問題意識が語られました。

「韓国では平均49歳で最初の職場を離職するケースが多く、人生100年時代を見据えた“50歳以降のキャリアの再構築”が急務となっています。ソウル市では、再就職支援や職業訓練、社会貢献活動の機会づくりなど、多面的な支援策を模索しています。」

こうした背景のもと、50プラス財団ではキャリア相談をはじめ、ミドルシニアと企業をつなぐマッチング支援や訓練プログラムなどを公的資金で運営されています。訪問団の皆さまは、日本における支援者育成や、民間と行政が連携しながら進めている取り組みにも高い関心を寄せられていました。

対話を通じた学び──支援の本質を共有

質疑応答では、以下のような幅広いテーマについて活発な対話が交わされました:

国家資格「キャリアコンサルタント」の養成と更新制度

企業内におけるキャリア支援とJCDA会員の活動領域

セルフ・キャリアドック制度と支援プログラム

「経験代謝」に基づく支援アプローチと研修体系

ミドルシニア向けアセスメントツールとキャリア面談実践

指導者(スーパーバイザー、インストラクター)育成のしくみ  など

JCDAが実施している以下のようなプログラムについてもご紹介しました:

一般向けサービス

キャリアカウンセリング・ルーム

キャリアドック(キャリアの定期診断)

支援者向け研修プログラム(キャリアコンサルタント更新講習)

技能講習② ミドルシニア

KK02 技能講習:ポータブルスキル見える化ツール

KC15 技能講習⑮ セルフ・キャリアドック制度【実践演習】

いずれの研修も、1クラス約20名の少人数で構成され、実践的な学びを重視した設計となっています。

最後に

キャリア支援は、「問題解決」や「マッチング」だけにとどまらず、「話す」「考える」という体験そのものが重要です。JCDAでは、「人生すごろく金の糸」のようなボードゲームを用い、楽しみながら自分の経験を語るワークも行っており、訪問団の皆さまからも強い関心が寄せられました。

今回の訪問を通じて、制度や文化の違いを超えて共有できる支援のあり方が見えてきました。韓国と日本は、少子高齢化や働き方の多様化といった共通課題を抱えており、今後の交流も期待できる有意義な対話の時間となりました。

JCDAとしても、国内にとどまらずアジア地域全体において、キャリアカウンセリングの価値と実践を広げていけるよう、国際的な連携を今後も積極的に模索してまいります。

ソウル市50プラス財団の皆さま、このたびのご訪問、誠にありがとうございました。