日本キャリア開発協会 理事長 佐々木 好謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
日頃よりJCDAの活動を支えてくださる会員の皆さま、そして協会に関心を寄せてくださる多くの皆さまに、心より感謝申し上げます。
2025年は、私にとって理事長として初めての一年でした。初めて触れる景色、新しい役割に緊張しながら臨みましたが、そのたびに皆さんの温かい言葉や真摯な思いに支えられ、“一人で背負わなくていいのだ”と思えた一年でもありました。JCDAという組織は、誰か一人がつくるものではなく、多くの方の小さな行動や気づき、そして積み重ねた活動によって形づくられていることを、改めて実感しています。
昨年12月、JCDAは設立25周年を迎えました。記念大会のテーマであった“わたしたちは「何者」か、何のために生きるのか”という問いに向き合いながら、CDA一人ひとりの経験、そしてつながりが、光り輝いていることに、感動と敬意が湧いてきます。節目を迎えた今、私たちは何を継承し、どこへ向かうのか。その問いこそが、私たちの原動力です。
2025年
――“内から外へ”が自然に動き始めた一年
2025年は、大原良夫前理事長からのバトンを受けた「内から外へ」という流れを実感する一年になりました。
発信を強化する中で、私たち自身もJCDAの価値を振り返る時間となりました。
◇電子版『2024年度 年次報告書』の創刊
◇ウェブサイトの刷新と最新情報の随時更新
◇Facebookのほか、公式X・Instagram・noteなど多様なSNSへの広がり
◇電子版『JCDAジャーナル』の発行と一部記事の一般公開
◇JCDA公式『キャリアコンサルタント実技試験(論述・面接)学習ガイドブック』の発刊
◇CDA STUDENT認定校の増加と、小中学校・高校・大学でのキャリア教育支援の拡大
◇「人生すごろく『金の糸』」のガイドブック発刊、アンバサダーによる発信
これらの新たな取り組みは、“外への発信の強化”を狙いとしていましたが、同時に「JCDAが何を大切にしてきたのかをもう一度見つめ直す」機会でもありました。発信し、俯瞰し、自問自答して価値を問い直し、また挑戦していく。そんな一年でした。
2026年
――“人の物語”を大切に扱う時代へ
いま、AIの急速な進化や世界情勢の不安定さの中で、人の働き方や生き方が大きく揺れています。情報が手に入りやすく便利になった一方で、人の価値や存在が揺らぎやすくなる側面も垣間見えます。
このような時代だからこそ、キャリアカウンセリングが果たす役割は大きくなっていくのではないでしょうか。「その人は人生で何を大切にしようとしているのか」「この選択の裏側には、どんな痛みや願いがあるのか」といった“その人の物語”の深い領域やアイデンティティに、AIは触れられません。
キャリアカウンセリングは、その人が大切にしたい価値を取り戻し、揺らぎの中から自分自身の心のエネルギーを見出すプロセスです。人と人の間に生まれる温かいまなざしや、信頼に基づいた関係性によって自己概念の成長は支えられています。だからこそ、人と向き合い、その人の物語に敬意を払う姿勢が、ますます大切になっていくと感じています。
2026年は、CDAの役割を改めて社会に示し、磨き、届ける一年にしたいと考えています。
1. ピアトレーニングを“ひらく”
~経験代謝の輪を社会へ
25年にわたる取り組みの中でも、ピアトレーニングは、JCDAにとって最も大切な「宝物」のひとつです。ピアファシリテーターやアドバイザー、そして支部地区会の幹事の皆さんのご尽力によって支えられ、経験代謝のエッセンスを最も体験できる場として日本中に広がっていきました。
2026年は、この貴重な機会を会員の枠にとどめず、会員以外のキャリア支援者をはじめ、学生や社会課題に取り組む現場の方々にも触れていただく機会をつくっていきたいと考えます。
立野了嗣会長が経験代謝の最新論文をおまとめくださったこともあり、私たちが大切にしてきたキャリアカウンセリングの本質を、広く社会にシェアしていくきっかけにしたいと思います。
2. 社会課題とともに歩む
~CDAのマインドと専門性を必要とする現場へ
私たちの専門性を必要としている人たちに届けるため、日本のさまざまな分野で、キャリアカウンセリングの視点が求められていると感じます。
病気の治療と仕事の両立、多文化共生、地域の孤立、不登校、貧困、家族のケアなど、どの現場にも“その人がどう生きていきたいのか”に根差した支援が本来必要です。CDAのマインドと専門性が貢献できる領域は、さらに広がっていくと思います。
一方で、支援の現場で向き合う「現実」は、いつも簡単ではありません。安易な一般論は役に立たず、信頼関係の確立や専門性の限界に悩み、支援者としての自分に問い直しが突きつけられることもあります。それでも、「人が変化に向き合う力は、誰の中にもある」という信念を持って向き合いたいと願います。
困難な現場こそ、他団体との協働が大切です。2026年は、社会課題に向き合うさまざまな団体とのネットワークも広げていきたいと思います。
3. 子どもたちの未来を支える
~キャリア教育への取り組み
将来への不安が語られる時代にあって、子どもたちが自分のことを信じ、「こんなふうに生きてみたい」と自然に思えることは、とても大切です。小中学校・高校・大学でのキャリア教育支援に関わるたびに、CDAと早い段階で出会うことが、子どもたちの未来をひらく小さなきっかけになり得ることを実感します。
2026年は、教育現場や自治体との連携をさらに深めながら、子どもたちの未来を支えるキャリア教育に、より積極的に取り組んでいきたいと考えています。皆さんの実践や工夫を共有し合いながら、「キャリア教育に強いCDA」としての役割を広げていければと思います。
4. 中小企業こそ、キャリアカウンセリングが必要な場所
「内から外へ」の取り組みで2025年は企業からの相談も増えましたが、その多くは大企業からでした。しかし、本当にキャリア支援が必要なのは、日本の経済を支える中小企業です。
小さい組織こそ、経営者を含む個々人の自己概念が組織全体に及ぼす影響は大きいと言えます。人材育成に関する制度が整っているとは限らず、経営者が孤独を抱えたり、変化への向き合い方がわからなかったりする場面が多いからです。そこにCDAが対話の機会をつくり、個人と組織の両方の成長を支えられれば、その存在価値はとても大きなものになります。そのためには、経営・組織・人材の文脈を理解し、有機的なつながりを育む実践力が必要です。取り組み事例を着実に増やしていくことで、CDA の活躍機会にもつなげていきたいと思っています。
5. 普及とともに“質と倫理”を大切にしたい
キャリアカウンセリングが広がることは嬉しいことです。その一方で、人の人生に深く触れる専門職だからこそ、私たちCDAには、スキルや知識の先にある、人間としてのあり方や成長の必要性が問われています。
スーパービジョンによる自分の支援のあり方の見直しや、自らがキャリアカウンセリングを定期的に受けて人間的に成長していくことが、専門性と職業倫理を支え、人間観を涵養していくことにつながると思います。
学び、揺れ、立ち止まりながら、自分自身を育てていく。その姿勢こそが、支援者としての大切な土台だと思います。
結び
――自分のペースでCDAを生きてほしい
CDAは単なる資格ではなく、“生き方に寄り添う学び”そのものだと思っています。
JCDAのキャリアドック(キャリアの定期診断)でも活用していますが、皆さんも一度はライフラインチャートを描いてみたことがあるのではないでしょうか。振り返ってみると、CDAとしての生き方の充実も、山あり谷ありのカーブを描くかもしれません。学びや活動が活発な時期も、少し距離を置く時期も、そのペースは人それぞれです。どんな関わり方でも、皆さんの経験や思いはJCDAの大切な財産です。
自分とつながり、仲間とつながり、社会とつながる。
2026年も、JCDAが皆さんにとって「安心してつながることができる場所」「成長のきっかけになるコミュニティ」であり続けられるよう、さまざまな学びと活動機会を展開しながら社会に貢献できるよう、ともに歩んでいきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
≪表紙画像内の書:大原良夫特別顧問より≫
~書に込められたメッセージ~
『走』・・・「午(うま)」年にあやかって、今年は、ひとつのことに突っ走ってみませんか?
『新』・・・「新」は、スタート、再開、やりなおし、なんでももじれる「新」。あなたの「新」は?




