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可能性を閉じない、選択肢をともにつくる

2026年度CDA大学人会議 合同研究会(中部)に参加して

皆さん、こんにちは。JCDAの佐々木です。9月5日(土)、愛知大学名古屋キャンパスで開催された「2026年度CDA大学人会議 合同研究会(中部)」に参加しました。前後は不安定な天候が続きましたが、この日は幸い晴天に恵まれ、関東、関西、中部をはじめ、各地から皆さんが集まりました。

CDA大学人会議は、CDA資格を持ち、大学に勤務する教職員が、学生の就職活動をどのように支えるかを考え、情報交換し、行動していくために生まれた集まりです。関東で始まった活動から、2003年には関東・関西による合同研究会が始まり、その後、中部も加わりました。合同研究会は今年で23年。地域を越えてそれぞれの現場での実践を持ち寄り、学び合う場として、その歩みを重ねてきました。

午前中には、希望者で熱田神宮を歩く特別企画「ブラ熱田」も行われました。今年も大学人会議の皆さんと再会できたことに感謝しながら、雨上がりの爽やかな境内を歩き、名物の宮きしめんときよめ餅もいただきました。

人が育つ場に、私たちはどう関わるか

私は、「人が育つ場に、私たちはどう関わるか―可能性を閉じない社会をともにつくる―」と題して、基調講演を担当しました。

お話ししたのは、JCDAの現在地と、社会から求められる「開発型支援」、CDAが捉える「成長」、そして、人が育つ場における倫理についてです。

JCDAは2025年に設立25周年を迎え、2026年8月には会報誌「JCDAジャーナル」が100号となりました。キャリアカウンセリングを社会に広げること。専門性と倫理を含めて、その質を高めること。そして、人とデジタルが協働する未来に向き合うこと。四半世紀の歩みを振り返りながら、変わらず大切にしたいことと、これから取り組むべきことをお伝えしました。

今後のキャリアコンサルティングには、働く人が自らの目指す姿を描き、その実現に向けて歩む力を育てる「開発型」の支援が求められています。

私なりに言えば、その人の内側にある「こうありたい」「何を大切にしたい」という思いが、学びや仕事、社会との関わりにつながり、自らのキャリアをつくっていけるよう継続的に伴走することです。

これは、JCDAが「経験代謝」や「金の糸」を通して大切にしてきたこととも重なります。一見ばらばらに見える経験を語るなかで、その人が繰り返し大切にしてきたものが、少しずつ見えてくる。私たちは、その人の経験をつなぐ「金の糸」を、ともに見いだしていく存在でありたいと思います。

そして、その人らしさは、他者や社会との関わりの中でも育まれていきます。自分の思いや持ち味を大切にしながら、周囲の人と関わり、「ここにいていい」「自分もこの場の一員だ」と感じられること。「個性の発揮」と「帰属意識」の両方を大切にする。本人とともに考え、必要に応じて周囲の環境にも働きかけながら、その人が自分らしく力を発揮できる場をともにつくっていくことも、CDAの役目だと考えています。

そして、人の成長に関わるからこそ、倫理が問われます。

倫理は、問題を起こさないためのルールにとどまりません。「守るもの」から「問い続けるもの」へ。支援する側の言葉や判断には力があり、相手の将来に影響を与えます。

例えば、難しい進路を望む学生を前にしたとき、その人の評価を早々に固定していないか。本人が自分で考え、選べる余地を残しているか。正解を急がず、自分の関わりを問い直すことのできる「迷える人」でありたいとお話ししました。

答えを急がず、その人の経験に立ち止まる

関東研究会からは、立正大学の斉藤広樹さんがAI時代におけるキャリアコンサルタントの役割を、関西研究会からは、帝塚山大学の近藤浩さんと四天王寺大学の安西麻紀さんが、進路に揺れる学生への支援を取り上げ、それぞれ報告しました。

生成AIは、情報を集め、文章を整え、選択肢を示すことを驚くほど速く行います。学生の就職活動や大学の支援業務でも、すでに身近な存在です。

AIが示す選択肢を活用しながらも、表情や沈黙、迷い、言葉にならない「何か違う」という感覚に立ち止まり、本人が自分の答えを見つけるまで待つことは、支援者が担う大切な役割です。

AIより優れた答えを出すことではなく、答えが生まれるプロセスに関わること。関東・関西の発表からは、その役割が浮かび上がりました。

事例検討では、ある経験をきっかけに自信を失い、進路に揺れる学生とのやり取りを通して、すぐに次の選択肢へ移る前に、まずその経験に立ち止まることの意味が話し合われました。

そのとき、何が起きていたのか。どのような自分を思い描いていたのか。つらさや迷いを語り、自分で意味づける時間を、支援の中でどれだけ大切にできるかが問われます。

二つの発表に共通していたのは、支援者が答えを与えることよりも、その人が自分の経験に触れ直し、自分で選べる余地を守ることでした。

完成された成功事例だけでなく、迷いや、うまくいかなかった経験も持ち寄り、他者の見方に触れながら実践を振り返る。専門職が学び続ける場としての大学人会議の意味も、あらためて感じました。

学生が「やる意味」に出会う場をつくる

最後は中部研究会から、名古屋学院大学商学部の今井凛さんと江利川良枝さんによる、学生主体の就職活動支援についての発表です。

今井さんは、誰に相談し、何から始めればよいのか分からない同世代の姿をきっかけに、学生同士で就職活動を支え合う場を立ち上げました。

活動を続けるなかで見えてきたのは、動き出せない学生は「やる気がない」のではなく、まだ自分にとっての「やる意味」に出会っていないのではないか、ということでした。

まずは「自分にもできるかもしれない」と思えるきっかけをつくる。そこから学生が自分の経験や価値観を振り返り、仕事や社会とのつながりを真剣に考え始める。同じ時代を生きる仲間とともに、一歩を踏み出せる場が生まれていることに、心を動かされました。

学生自身の声に直接触れることは、その活動を応援するだけでなく、私たち支援者が学生の今を知り、これまでの支援のあり方を問い直す機会にもなります。

「自分を知る」ことを大切にしながら、自らの道を考え、学生のための活動を前に進めようとする今井さんの姿も心に残りました。これからどのような形で力になれるのか、一緒に考えていきたいと思います。

世代と立場を越えてつながった問い

基調講演と三つの研究発表は、それぞれ異なるテーマを扱いながらも、そこには、AIを活用した支援、進路に揺れる学生への関わり、学生主体の就職活動支援を貫く、一本の糸がありました。

可能性を閉じないとは、「何でもできる」と励ますことでも、選択肢をたくさん並べることでもありません。目の前に見えている姿だけで、その人を決めない。その人の経験に立ち止まり、まだ言葉になっていないものに耳を澄ませ、自分で意味づけ、選べる余地を残す。さらに必要であれば、その人が動き出せる場や仕組みを、ともにつくっていくことです。

大学には、学生が社会へ出る前に、自分のことを語り、試し、迷い、選び直すことのできる時間があります。一方で、大学を取り巻く環境や学生との接点のあり方も変化し、ガイダンスや学内企業説明会に学生が集まりにくくなっているという声も聞かれます。そうしたなか、学生の実感にどう近づき、次の世代とどのような場をつくっていくのかは、大学人会議に限らず、私たち支援者に共通する問いです。

AIが身近になるこれからの時代、人が自分の答えを見いだす過程に関わるCDAの役割は、むしろ一層大きくなるのかもしれません。若い世代の成長を支えるだけでなく、その声や力に触れることで、私たち自身も学び、変わっていく。そして、支援者も一人で答えを抱え込まず、実践を持ち寄り、問い直しながら学び続ける。今回の研究会は、世代や立場を越えて、ともに育ち合うことの意味を感じる場でもありました。

開催に向けて丁寧にご準備くださった中部研究会の皆さま、会場をご提供くださった愛知大学の皆さま、発表者、参加者の皆さまに、心より御礼申し上げます。

来年は関東での開催が予定されているとのことです。また皆さんと、それぞれの現場で生まれた実践と問いを持ち寄れることを楽しみにしています。

そして、今回の出会いをきっかけに、今井さんとあらためて対談する機会をいただくことになりました。活動に込めた思いや、これから描いていきたい未来について、じっくりお話を伺いたいと思っています。対談の模様は、JCDAジャーナル101号(11月号)に掲載予定です。どうぞお楽しみに!

JCDA理事長 佐々木 好