目次

皆さま、日頃より大変お世話になっております。JCDAの佐々木です。

2026年8月、『JCDAジャーナル』は創刊100号を迎えました。

この節目にあわせて、創刊0号と100号の中から、今あらためて皆さまにお読みいただきたい記事をご紹介する「JCDAジャーナル100号記念」シリーズをお届けしています。

第1回の「『JCDAジャーナル』創刊にあたって」では、2000年12月に発行された創刊0号から、当時専務理事だった立野了嗣会長の巻頭挨拶をご紹介しました。

そこに記されていたのは、まだ設立されたばかりのJCDAが、社会の大きな変化を見つめながら、キャリアカウンセリングを日本に根づかせていこうとする姿でした。

それから25年以上。

小さな冊子として始まった『JCDAジャーナル』は、会員の活動を伝え、国内外の理論や実践を紹介し、時にはJCDA自身が何を目指すのかを問いかけながら、100号まで歩みを重ねてきました。

では、その長い歩みの中で、『JCDAジャーナル』はどのような役割を果たしてきたのでしょうか。

第2回となる今回は、100号に掲載した、前理事長で現在はJCDA特別顧問を務める大原良夫さんの特別寄稿「私にとってのJCDAジャーナル」をご紹介します。

大原さんは、ジャーナルに掲載する海外論文の選定にも携わり、理事長就任後には誌面の大幅な刷新にも取り組みました。

記事を読むと、一冊の会報誌の歴史というだけではなく、そこに記録されてきたJCDAの歩み、会員の学び、社会との対話、そして大原さん自身のキャリアが重なって見えてきます。

特に印象的なのは、最後に『JCDAジャーナル』を「未来へ受け渡していく『金の糸』」と表現されていることです。

媒体や伝え方は変わっても、大切な価値を言葉にし、人と人をつなぎ、次の時代へ渡していく。

100号という節目に、あらためて考えさせられる文章だと思います。

それでは、全文をご紹介します。


JCDAジャーナル100号に寄せて

私にとってのJCDAジャーナル

日本キャリア開発協会
特別顧問(前理事長) 大原 良夫

ある総会で、当時理事長だった私は、JCDAジャーナルにNHKニュースキャスター有馬嘉男氏との対談が掲載されたことを、少し誇らしい気持ちで紹介したことがある。その質疑応答で、一人の参加者から「デジタル時代に紙のJCDAジャーナルは必要なのでしょうか。費用もかかるのではありませんか」と質問を受けた。

私は思わず、「紙であることに意味のある内容が詰まっているのです」と答えた。その時はそう信じて疑わなかった。しかし皮肉なことに、その後、私自身がJCDAジャーナルのデジタル化を決断することになる。時代は変わる。それでも今振り返ると、変わらなかったものがある。それは、JCDAジャーナルがJCDAの歴史を記録し、人と人をつなぎ続けてきたという役割である。

創刊0号(2000年)は、JCDA設立記念特集として始まり、名誉会員ナンシー・シュロスバーグ博士のメッセージが掲載された。B5判23ページの小さな冊子だったが、そこには「キャリアカウンセリングを日本に根づかせる」という大きな志が込められていた。

創刊1号では第1回CDA資格認定試験合格者の座談会が掲載された。当時の笑顔は、いま2万人を超えるCDAの原点であり、まさに現在のJCDAを育てた「親」の姿であるように思う。

さらに2号以降は、当時提携していた全米キャリア開発協会(NCDA)の学術誌『Career Development Quarterly』の翻訳掲載が始まり、マーク・ポープ博士をはじめ、スーパー、クランボルツ、ハンセン、レント、サビカスなど、多くの研究者の理論を紹介してきた。私自身も論文選定に携わったが、その過程で出会った「ポストモダンのキャリア介入」の論文は、その後の私のナラティヴ研究につながる大きな転機となった。JCDAジャーナルは会員だけでなく、私自身を育ててくれた学びの場でもあった。

また、立野会長が提唱した「経験代謝」は、JCDAジャーナルを通して会員へと広がり、やがてJCDAの活動の柱となった。2010年の34号「キャリアカウンセリングとは何か」の座談会で、「経験代謝はJCDAの全活動の中から生まれた」と語られていたことが印象に残っている。JCDAジャーナルは理念を共有し、文化を育てる場でもあったのである。

私が理事長となってからは、中長期ビジョン「内から外へ」をJCDAジャーナルにも反映したいと考えた。会員だけの情報共有に留まらず、社会へ開かれたJCDAジャーナルにしたい。その思いを「社会」「学習」「対話」という三つの言葉に託した。

「社会」では、「よりよい社会のデザインに向けて」と題した対談シリーズを企画し、行政、学識者、関連団体との対話を重ねた。その中から新たな連携も生まれた。哲学者小川仁志氏との対談では、キャリアカウンセリングに哲学が果たす役割を改めて考えさせられた。また、ReBit代表理事・藥師実芳氏との対談では、LGBTQへの理解と環境調整というキャリアカウンセラーの新たな使命を学んだ。

「学習」では、経験代謝だけでなく、メンタルヘルス、若年者支援、キャリア教育、コミュニティ心理学など、多様な分野の知見を紹介した。「対話」では、「心の専門家が答えるQ&A」や、書作品をきっかけに会員の声を集める企画など、一方向ではない誌面づくりを目指した。

そして忘れてはならないのがコロナ禍である。対面で会えない時代だからこそ、JCDAジャーナルは「キャリアカウンセラーの使命とは何か」を問い続ける場となった。会員一人ひとりが孤立しないように、そして社会とどう向き合うかを考える場として、JCDAジャーナルの存在意義を改めて感じた。

100号を迎えたいま、改めて思う。JCDAジャーナルとは、単なる情報誌ではない。それはJCDAの歴史そのものであり、会員一人ひとりの歩みを記録し、経験をつなぎ、未来へ受け渡していく「金の糸」である。

媒体は紙からデジタルへと変わっていく。しかし、人と人をつなぎ、経験を言葉にし、社会との対話を育み、「共に生きる」というJCDAの理念を紡いでいく役割は変わらないだろう。

100号は一つの到達点であると同時に、新しい物語の出発点でもある。これからもJCDAジャーナルが、多くの会員にとって学びと対話の場であり続け、JCDAの未来を照らす存在であることを心から願っている。


記録すること、つなぐこと

いかがでしたでしょうか。

大原さんの文章を読みながら、私が特に心に残ったのは、JCDAジャーナルを「JCDAの歴史そのもの」と表現されているところです。

25年以上のバックナンバーを振り返ると、そこには、その時々のJCDAが何を考え、何を学び、社会のどのような課題に向き合おうとしていたのかが残されています。

同時に、それは組織だけの歴史ではありません。

CDAの皆さんの実践や学び、資格を取得した時の思い、各地で生まれた活動、さまざまな人との出会いや対話。

一人ひとりの経験が誌面に残され、それを別の誰かが読み、考え、また次の実践へとつないでいく。

そう考えると、大原さんが最後に使われた「金の糸」という表現が、とても象徴的に感じられます。

『JCDAジャーナル』もまた、一人ひとりの経験や、JCDAが歩んできた時間の中にある「点」をつなぎ、その意味を次の世代へ手渡していくものなのかもしれません。

そして、今回の記事には、次回へとつながる一つの大切な名前も登場しています。

ナンシー・K・シュロスバーグ先生。

創刊0号には、2000年10月26日に開催された日本キャリア開発協会設立記念「キャリアカウンセリング・フォーラム」でのシュロスバーグ先生の基調講演が掲載されています。

JCDAが誕生したその時、世界的な転機研究の第一人者は、日本のキャリアカウンセラーたちに何を語ったのでしょうか。

次回、「JCDAジャーナル100号記念③ ~設立記念イベント基調講演から」では、その講演を振り返ります。

25年以上前の言葉でありながら、今の私たちにも問いかけてくるものがたくさんあります。

ぜひ、続けてお読みください。

JCDA理事長 佐々木 好


関連記事・関連ページ

▼JCDAジャーナル100号記念① ~『JCDAジャーナル』創刊にあたって
創刊0号に掲載された立野了嗣会長の巻頭挨拶をご紹介しています。

▼JCDAジャーナル No.100
https://www.j-cda.jp/ebook/vol100_202608/
※閲覧には会員マイページへのログインが必要です。

▼JCDAジャーナル バックナンバー
https://www.j-cda.jp/member/backnumber.php
※一部コンテンツの閲覧にはログインが必要です。

 

▼人生すごろく「金の糸」
https://www.j-cda.jp/goldenthread/about

▼大原私家版「金の糸」~「自伝的記憶」「時間展望」「語り」というテーマを学習し、「金の糸」の魅力をより深く理解する~
https://www.j-cda.jp/seminar/skill-up/ct21.php

大原良夫特別顧問(前理事長)による特別ワークショップ。「自伝的記憶」「時間展望」「語り」という視点から、人生すごろく「金の糸」の魅力をさらに深く学びます。

▼JCDA創立25周年記念「共に生きる」
https://www.j-cda.jp/event-lp/2025/live_together/

▼CDA資格について
https://www.j-cda.jp/cda-qualification.php

▼協会の歩み
https://www.j-cda.jp/about/history.php