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皆さま、こんにちは。JCDAの佐々木です。

2026年8月11日(火・祝)、長崎地区会が主催する「平和祈念ワークショップ」にオンラインで参加しました。

長崎地区会では、2021年から毎年、8月9日の長崎原爆の日に近い時期に、平和について学び、考え、語り合う場をつくってきました。

今回は、長崎だけでなく、北海道から九州まで全国各地から27名が参加しました。

冒頭では、7月28日に発生した熊本地震で被災された皆さまへのお見舞いが伝えられました。

人が安心して暮らし、自分の人生やこれからについて考えられることは、決して当たり前ではありません。平和とキャリアは、決して遠く離れたテーマではないことを改めて感じながら、ワークショップが始まりました。

二重被爆の記憶を受け継ぐ

講師は、長崎市家族証言者であり、「二重被爆 遺族友の会」の活動に取り組む原田小鈴さんです。

原田さんの祖父・山口彊さんは、1945年8月6日に出張先の広島で被爆し、重い火傷を負いながら長崎へ戻り、その3日後の8月9日、再び長崎で被爆しました。

2009年には、被爆者健康手帳に広島での被爆が追記され、広島と長崎の双方で被爆したことが公式に認められました。

講話では、山口さんの体験を描いた紙芝居や映像を通して、キノコ雲の下で何が起きていたのかが伝えられました。

そこで示されたのは、爆風や熱線、放射線による被害だけではありません。

被爆者やその家族が、結婚や出産、就職など、人生のさまざまな場面で受けてきた差別や偏見。そして、家族への影響など、さまざまな事情から公の場では体験を語ることができなかった方や、二度被爆したことを家族にさえ伝えないまま亡くなった方々もいたことを知りました。

原田さんも、お祖父さまの体験を知り、そのバトンを引き継いだことを、当初は「大きな重荷」と感じた時期もあったと語られました。

しかし、声を上げることができないまま亡くなった方々に思いを寄せる中で、いまは、語り継いでいかなければならないという自覚を深めながら、活動を続けておられます。

原田さんは、一つひとつの事実をさまざまな角度から丁寧にたどりながら、まっすぐに伝えてくださいました。

私はその凛とした語りの中に、原田さんが抱えてこられた葛藤や、平和への強い願いを感じました。

「国と国」ではなく、「人と人」として

講話の後半では、原田さんと、原爆投下に関わった米軍人ジェイコブ・ビーザー氏の孫、アリ・ビーザーさんとの交流についても紹介されました。

ジェイコブ氏は、広島に原爆を投下したエノラ・ゲイと、長崎に原爆を投下したボックスカーの双方に搭乗し、二つのキノコ雲を上空から見た人物です。

一方、山口さんは、その二つのキノコ雲を地上から見ました。

二人の祖父は、「キノコ雲の上と下」という、大きく異なる場所にいました。

その孫である原田さんとアリさんは、それぞれの家族の歴史と向き合い、容易には重ね合わせることのできない立場の違いや葛藤を抱えながら、2013年の出会い以来、13年にわたって対話を続けてきました。

原田さんは、お祖父さまから「原爆は許せない。しかし、アメリカ人が憎いわけではない」と教えられてきたそうです。

また、日本にも他国を傷つけた加害の歴史があることから目を背けず、被害と加害の双方を見つめようとしてきました。

原田さんとアリさんが築いてきたのは、「日本とアメリカ」という国同士の関係ではなく、一人の人間と一人の人間との関係です。

相手の背景を知ろうとすること。すぐには重なり合えない違いにも向き合うこと。そして、対話を諦めないこと。

その積み重ねの中に、未来への道筋を考えるヒントがあるように感じました。

お二人の対話と協働の歩みは、2025年に『「キノコ雲」の上と下の物語―孫たちの葛藤と軌跡』として刊行されています。

それぞれの祖父が残した記録をたどりながら、異なる家族の歴史を背負った二人が重ねてきた葛藤と対話の軌跡が描かれています。

心が動いたことを、言葉にしてみる

講話の後は、参加者がメンバーを替えながら、3回のグループ対話を行いました。

テーマは、

「講話を聴いて感じたこと」

「今日の講話は、自分にとってどのような経験になったか」

「今後のCDAとしての活動に、どのようにつなげていくか」

というものでした。

対話に先立って、「相手や自分を決めつけない」「負の感情も大切にする」「どこまで自己開示するかは自分で決める」「話したくないときは無理をせず、自分との対話でもよい」といったグループルールも確認されました。

今日のテーマを受け止めること自体に、大きな心のエネルギーを要した方もいたと思います。

すぐには言葉にならないことも、見たくない、知りたくないと感じることもあります。

そんな自分を否定せず、それぞれのタイミングで少しずつ向き合っていくことの大切さを、進行役の方が丁寧に言葉にしてくださいました。

そのような配慮のもと、全国各地から集まった参加者が、安心して語ることのできる場の中で、それぞれの内側から立ち現れた言葉を少しずつ分かち合っていきました。

平和とキャリア支援

私自身、この日は、どれほどつらいお話を伺っても、目をそらさずに受け止めよう、泣かずに聴こうと思っていました。

それでも涙があふれました。

悲しさだけではない、この涙は何を意味しているのだろう・・・。

そう自分に問いかけました。

山口さんが、二度の被爆という過酷な体験を負いながらも生き抜き、晩年には自らの使命を果たそうとされたこと。

そして原田さんが、お祖父さまから受け取った重いバトンと葛藤を抱えながら、被害と加害のどちらか一方に世界を単純化することなく、アリさんと「人と人」として13年にわたる対話を重ねてこられたこと。

その生きる姿に、胸の奥を強く揺さぶられたのだと思います。

人間は、時に誰かを傷つけ、対立し、取り返しのつかない争いや戦争を引き起こしてしまう弱さや危うさを持っています。

しかし同時に、異なる立場や歴史を抱えたまま相手に歩み寄り、その人を知ろうとし、ともに未来をつくろうとする力も持っている。

その可能性に触れたとき、悲しみを越えて、内側から込み上げてくるものがありました。

人の弱さや危うさと同時に、人が持っている尊い何か。

それを私は、原田さんの講話から受け取ったのだろうと思います。

そして平和は、もしかすると、自分の心と向き合うことから始まり、その先に、人と人とが向き合うことへとつながっていくのかもしれない。

そんなことを感じました。

CDAによるキャリア支援は、仕事や職業だけを扱うものではありません。

人と人、人と社会、人と地域とのつながりを見つめ、一人ひとりが尊厳をもって生きることを支える営みです。

相手の声を決めつけずに聴くこと。
自分とは異なる背景や価値観を知ろうとすること。
違いがあっても対話を諦めないこと。

その日々の積み重ねは、平和を育むこととも深くつながっているのではないでしょうか。

国と国との戦争だけでなく、私たちの日々の暮らしの中にも、自分と異なる考えを持つ人を排除する、その人の背景をよく知らないままレッテルを貼る、一方的に対話を閉ざす。

そうした、争いや分断へとつながりかねない小さな芽が潜んでいるのかもしれません。

だからこそ、私たちCDAが学び、実践している日常の中にも、平和に向けてできることがあるのだと思います。

今回の経験は、JCDAが2012年の会員1万人達成記念大会以来、大切にしてきた「共に生きる」という言葉とも重なりました。

自分自身を大切に思うこと、身近な人を大切にすることから始め、異なる他者と支え合い、受け入れ合いながら生きる。

平和もまた、こうした日々の関係の中から育まれていくものなのかもしれません。

山口彊さんは、晩年の映像の中で、見舞いに訪れた映画監督ジェームズ・キャメロン氏に、こう語っていました。

I have done my duty

その言葉は、私には「私は自分の役目を果たした。――そして、あなたは?」という問いかけとして響き、強く心に残りました。

私もいつの日か、自分なりに役割を果たし、生を全うしたと思えるように歩んでいきたい。

そして、一人ではできないことも、全国のCDAの皆さんとともに考え、対話し、次の世代へつないでいきたいと思います。

また、今回の出会いを一度きりのものにせず、原田さんとのご縁を大切にしながら、これからもその活動から学ばせていただき、JCDAやCDAとしてご一緒できることを考えていけたらと思っています。

心を込めてお話しくださった原田小鈴さん、長年にわたりこの大切な場をつくり続けてくださっている長崎地区会の皆さん、そして、心が揺れることも受け止めながらこの場に参加し、ともに考えてくださった皆さんに、心より感謝申し上げます。

知ること。
語ること。
対話すること。
そして、受け取ったバトンを、また誰かにつないでいくこと。

この日の経験を折に触れて振り返り、それぞれの日常と活動につなげていきたいと思います。

JCDA理事長 佐々木 好


関連情報

二重被爆 遺族友の会
公式ウェブサイト

書籍『「キノコ雲」の上と下の物語―孫たちの葛藤と軌跡』

原田 小鈴 著 / アリ・ビーザー 著 / 黒住 奏 訳
ISBN:9784022520685
定価:2,750円(税込)
発売日:2025年7月7日
四六判並製 296ページ

朝日新聞出版 書籍紹介ページ

JCDA「共に生きる」
立野了嗣会長による2012年のメッセージ「共に生きる」も掲載
「共に生きる」特設ページ

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