目次

地域で生きる一人ひとりに、CDAとしてどう関われるだろう――東北支部交流会in秋田

皆さん、こんにちは。JCDAの佐々木です。

10月3日(土)、JA秋田で開催された「JCDA東北支部交流会in秋田」に参加しました。テーマは「地域で生きる、地域で支える―これからのキャリア支援と私たちCDAにできること」です。

秋田地区長の池田智也さんからこの企画のお話をいただき、講話やトークセッションをご一緒する秋田銀行地域価値共創部 総合人材支援グループリーダー・マネージャーの渡邉文人さん、司会を担当する井上さんとも、オンラインで打ち合わせを重ねました。人口減少社会と言われる中、秋田は高齢化が進む地域の一つです。そこで暮らす人や企業は、どんな状況にあるのか。地域で生きる私たちCDAにできることは何か。講話と参加者の皆さんとの対話を通して考える場にしたいと、思いを共有しました。

当日は、東北5県から24名の皆さんが集まり、県外の地区長さんや地区長代理の方もご参加くださいました。冒頭、3〜4名のグループで自己紹介を始めると、会場のあちらこちらに笑顔が広がり、会話が弾んでいました。前に座っていた渡邉さんと、「私たちはこのまま皆さんのお話を見守っているのがいいかもしれませんね」と話したほどです。

後日、池田さんが共有してくださったアンケートのまとめからは、他県のCDAやキャリアコンサルタントと交流したい、地域で学びをどう生かせるか知りたい、資格を取得したばかりなので活動に触れてみたいなど、さまざまな期待を持って参加されていたことがうかがえました。

同じ資格を持つ者同士でも、経験してきた仕事も、暮らしている地域も、今気になっていることも違います。その違いを持ち寄って話すことが、この日の大切な時間になりました。

私からは、JCDAの現在地や、これからのキャリア支援に求められることについてお話ししました。その中で、2026年1月に公表された「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」の報告書に触れ、「開発型の支援とは、どのような支援でしょうか」と問いかけ、隣の方と話していただきました。

日々のキャリア相談では、仕事の応募先を決める、職場での困りごとを整理するなど、目の前の課題に向き合うことが多くあります。その時間が、ご本人にとって、自分の大切にしていることを知り、これからも自分で考え、選び、取り組んでいく力を育むものになる。そのような成長を支える関わりを、私たちはどう実践できるでしょうか。

これは、CDAが経験代謝によるキャリアカウンセリングを通して学んできたことと、深くつながる問いだと思います。

例えば、上司から言われた一言が、どうしても心に残っている方がいたとします。同じ言葉でも、気にならない人もいれば、深く傷つく人もいます。その違いには、その方がこれまでの経験の中で大切にしてきたことや、「こうありたい」という思いが関わっているかもしれません。

何が起きたのか、そのときどう受け止めたのかを丁寧に聴く。経験を語り、振り返る中で、ご本人もまだ十分には気づいていなかった思いが見えてくる。そして、その気づきを手がかりに、今の状況やこれからの関わり方を考えていく。

目の前の人を、年齢や職業でひとくくりにしたり、相談内容だけで表面的に分かったつもりになったりせず、その方がどう生き、何を大切にしているのかに向き合う。この相手への眼差しと、自己概念の成長を支える実践が、私たちCDAの専門性の土台にあると考えています。

続いて、渡邉さんから、地域の企業の人材支援にキャリアコンサルタントの学びをどう生かしているかを伺いました。

印象に残ったのは、「募集の前に対話がある」というお話です。

企業から「人を採りたい」と相談を受けたとき、欠員や採用条件の確認に加えて、どんな会社を目指しているのか、どんな課題があり、入社する人にどんな役割を担ってほしいのかを聴いていく。すぐに答えを提示するのではなく、経営者が話し、考える過程を共にしながら、思いを言葉にしていくのだそうです。

企業側に事情があるように、働く人の側にも、大切にしたいことや優先順位があります。渡邉さんからは、住まいの環境が整うことで就職の後押しになった例や、求職者の技術や経験を企業に伝えたことで、求人が出ていなかったところに採用の可能性が生まれた例が紹介されました。

求人票に書かれた条件の照合に加えて、その人が培ってきた力や、これからどのように暮らしていきたいのかを知る。企業が目指す未来も知る。その双方を丁寧につないでいくことで、最初には見えていなかった可能性が開かれる。私たちの学びが仕事の中でどう生きるかを、具体的に感じるお話でした。

後半は、参加者の皆さんから出された声をもとに、対話が広がりました。

退職後、地域の活動に関わりたいけれど、自分が引き受けた後、次の人に続かなかったらどうなるのか。よかれと思って始めても、周りの人の負担にならないか。そんな迷いを話してくださった方がいました。

「独りよがりになってはいけないのでは」という言葉が気になり、もう少し背景を伺いました。お話を聴くと、ご自身が何かをすることだけでなく、活動を引き継ぐ人や、地域の先々まで考えていらっしゃることが伝わってきました。

一歩を踏み出せないという姿にも、その方が大切にしているものが表れています。そこを知ると、一緒に考える問いも変わります。「どうすれば始められるか」に加えて、「どうすれば、次の人も無理なく担えるか」を共に考えることになるのです。

その方は、自分自身と、自分を含む世界をどのように見ているのか。ご自身のこれからと地域のこれからを、つながりの中で考えていらっしゃることに感じ入りました。

渡邉さんからは、町内会長を引き受けた際に、役割を交代して担えるルールをつくった経験が共有されました。私からも、大切な活動を続けるための仕組みを考えることと、一方で、見通しが十分に立たなくても始めることで道が開けていくこと、その両方について、自分の経験をお話ししました。

ご本人の思いを聴くところから、活動を支える環境の話へとつながっていく。個人への支援と環境への働きかけが、どのように結びつくのかを考える時間でもありました。

グループでの交流では、高校生の就職支援に関わる方から、仕事に対して「辛そう」というイメージを持つ生徒が多かったというお話がありました。家で疲れている親の姿や、身近な大人の様子から、そう感じているのだそうです。

そこで、地域で生き生きと働く大人に、高校生がインタビューする機会をつくれないかと考えている、と。

私も、仕事は楽しいか、辛いかと二択で聞かれたら、すぐには答えられません。大変なこともあります。それでも、その中で大切にしたいことや、工夫していること、誰かと力を合わせてうれしかったことがあります。

そんな大人の生の経験に触れることで、高校生の働くことへの見方が広がるかもしれません。語る大人自身も、「自分はこんな思いで働いていたんだ」と気づくかもしれません。地域にすでにある経験を、人と人との対話でつないでいく取り組みです。こうした機会を、CDAの皆さんと全国に広げていきたいと思いました。

ほかにも、雪かきから生まれる近所の方との会話、子どもや保護者との関わり、介護などの相談先が多くて迷う人をつなぐ支援、地域で働く外国人の方が抱える辛さなど、暮らしに根ざした話題が共有されました。私たちの身近には、まだ十分に聴かれていない声があるのだと思います。

終活についての対話では、「この先、どう生きたいのか」「何を大切に残したいのか」を話せる相手はいるだろうか、ということも考えました。

法律に関わる具体的な手続きや、ファイナンシャルプランニングなどのお金の相談に進む前に、自分でもまだまとまっていない思いを、誰かに聴いてほしいことがあります。何が気になっているのか、何を大切にしたいのか。話しながら、自分で気づいていく時間が必要なこともあります。

そのような時間を、暮らしの近くにつくっていくことにも、私たちの役割があるのではないでしょうか。

人口減少や高齢化という言葉からは、厳しい未来を思い浮かべがちです。もちろん、現実を見つめることは欠かせません。同時に、その地域には、今日も暮らしを営み、誰かを気にかけ、これからを考えている人たちがいます。

そして、支援者である私たち自身も、迷いや願いを誰かに聴いてもらうことが必要なのだと思います。会場では、他の方の話に耳を傾けながら、自分の活動について語る姿がありました。皆さんの真剣さや、それぞれの視点に触れることが、次の一歩を考える力になったのではないでしょうか。

私がこの日お伝えしたかったのは、自分の大切にしていることに気づくことが、周囲との関わりを考え、未来に向かう力にもなるということです。

「自分はこうありたい」という思いを起点に、「この職場で何ができるだろう」「この地域の人たちと、どう生きていきたいだろう」という問いが生まれる。その人自身の成長と、その人を含む環境のよりよいあり方を、共に支えていく。そこに、CDAの専門性を生かしていきたいと考えています。

交流会の後、池田さんから、懇親会でも皆さんがよい交流会だったと話してくださったこと、そして「みなさんの胸に一滴の問いを落とすことができた」と感じたことを教えていただきました。

その言葉をいただいて、当日の対話を思い返しました。すぐに答えが出なくても、ふと日常の中で思い出す問いがある。「あの人の話を、もう少し聴いてみようかな」「考えていたことを、仲間に話してみようかな」。そんな小さな動きにつながっていけば、うれしく思います。

池田さん、司会の井上さんをはじめ、準備と運営を担ってくださった皆さん。実践を分かち合ってくださった渡邉さん。そして、ご自身の経験や思いを語ってくださった参加者の皆さん、ありがとうございました。

私も一人のCDAとして、皆さんとの対話から生まれた問いを持ち帰りました。これから秋田や東北の出来事に触れるとき、会場で出会った皆さんの顔が浮かびます。そのつながりを大切にしながら、地域で生きる一人ひとりにどう関われるか、共に考え、行動していきたいと思います。

JCDA理事長 佐々木 好


参考情報:対話を通して、これからの生き方を考える取り組み

今回話題になった「これからをどう生きるかを語る時間」や「若者が働く大人の経験に触れる機会」につながる、JCDAの取り組みをご紹介します。

■ アクサ生命との取り組み――お金と、これからの生き方を共に考える
2026年8月に札幌で開催した特別セミナーでは、人生100年時代のお金について学ぶ時間と、これまでの人生を振り返り、これからの生き方や自分らしい幸せを考えるワークショップを組み合わせました。暮らしの経済的な備えと、自分がどう生きたいかを考える時間。その両方を大切にした取り組みです。以下のブログ記事の後半で紹介しています。

【特別寄稿④】転機理論の開拓者、ナンシー・シュロスバーグ先生からのメッセージ

■ SENSとの取り組み――学生が社会人の経験に触れ、自分の未来を考える
JCDAは、SENS株式会社との連携を通して、学生が自分の興味・関心や価値観を見つめ、これからの生き方・働き方を考える機会づくりに取り組んでいます。学生が社会人に仕事や人生について尋ねる「職業情報インタビュー」には、CDA会員も協力しています。自分の経験を語り、学生の問いに応えることも、若者のキャリア形成を支える関わりの一つです。

SENS株式会社とキャリア教育・キャリア開発支援に関する覚書を締結しました
学生たちの「キャリアの原点づくり」を支える――MASP Career Acceleration Programへの協力