「ありのままで未来を選べる社会」を支えるということ
― ReBit様の年次報告会に参加して ―
皆さま、日頃より大変お世話になっております。JCDAの佐々木です。
2026年5月28日、認定NPO法人ReBit様の2025年度年次報告会に参加しました。
ReBit様は、LGBTQもありのままで未来を選べる社会を目指し、教育、キャリア、福祉、まちづくりなど、幅広い領域で活動を続けている団体です。
代表理事の藥師実芳さんには、以前、JCDA会員向けセミナーにもご登壇いただいたことがあります。また、東京都の訪問支援事業を活用し、ReBit様にJCDA職員向けのセミナーを実施していただきました。
今回の報告会では、ReBit様が2025年度に取り組まれた教育、キャリア、福祉、まちづくりの各事業について、具体的な実践とともに報告がありました。
子どもたちが安心して学べる学校をつくること。
LGBTQの若者が自分らしく働く未来を選べるようにすること。
福祉や行政サービスを必要とする人が、安全に支援につながれるようにすること。
地域や自治体とともに、誰もが暮らしやすいまちをつくっていくこと。
その一つひとつが、切実な現実に向き合いながら積み重ねられている取り組みでした。
報告会の場に感じた、ReBit様のありよう
ReBit様の報告会には、これまでにも何度か参加させていただいています。
毎回印象に残るのは、報告される活動内容の伝え方がとてもわかりやすいこと。そして、参加者への配慮、お声がけ、安心してその場にいられる雰囲気が、いつも丁寧につくられていることです。
マイクやカメラのオン・オフを無理なく選べること。聞くだけの参加やチャットでの参加も尊重されること。無理に話さなくてよいこと。そこにいる一人ひとりの状態や安心が、大切に扱われていることを感じます。
ReBit様が目指している「ありのままで未来を選べる社会」は、活動のテーマとして語られているだけではありません。報告会の場そのものにも、その姿勢が表れているように感じます。取り組んでいる活動の内容と、それに取り組む皆さんのありようが一致していること。そこに、ReBit様の活動の強さと信頼があるのだと思います。
また、報告の中では、支援者、寄付者、連携団体、自治体、学校、地域の団体など、関係する方々への感謝が繰り返し語られていました。
社会課題に向き合う活動は、ときに切実で、厳しい現実に直面するものでもあります。ReBit様の活動領域が、教育、キャリア、福祉、まちづくりへと広がってきた背景には、このように周囲の人たちとともに歩もうとする姿勢があるのだと感じました。
数字が語る、子どもたちの現実
報告会では、ReBit様の2025年度の取り組みとともに、これまでの調査や「LGBTQ子ども・若者調査2025」などをもとに、LGBTQの子ども・若者たちの置かれている状況について共有されました。
LGBTQの約7割が学齢期にいじめを経験していること。
10代のLGBTQの2人に1人が、この1年で「死にたい」と思った経験があること。
一方で、教員養成課程でLGBTQについて学んだ教員は、13%にとどまること。
さらに、ReBit様が実施した「LGBTQ子ども・若者調査2025」では、LGBTQの中高生の89.5%が、この1年間に学校で困りごとや困難、ハラスメントを経験したと報告されています。
また、自分のセクシュアリティについて、担任の先生に相談できていないLGBTQの中高生は94.6%。学校に行きたくないと感じた中高生は約6割で、不登校を経験した割合も、全国平均と比べて中学生で3.5倍、高校生で4.3倍にのぼるとのことでした。
これらの数字は、ただの統計ではありません。
教室の中にいるかもしれない子どもたちが、困難を抱えながらも、先生にも、周囲の大人にも相談できずにいる。その現実を示しています。
多くの先生方もまた、どう向き合えばよいのかを悩みつつ、日々子どもたちと向き合っているのだと思います。だからこそ、ReBit様は学校現場に向けた研修や教材づくり、先生方への伴走支援を続けています。
LGBTQをめぐる課題については、社会の中にも、身近な組織の中にも、さまざまな受け止めがあります。不安や戸惑いを感じる人もいますし、その背景にも耳を傾ける必要があると思います。
それでも、まず向き合わなければならないのは、学校という大切な居場所で困難を経験しながら、先生にも周囲の大人にも相談できず、深く追い詰められている子どもたちがいるという現状です。
相談できる大人がいること、相談しなくても安心できる場所があること
報告会の中で印象に残った言葉があります。
ReBit様が目指しているのは、「必要な時に相談できる大人がいること」、そして「相談しなくても安心できる場所があること」だというお話です。
相談できる大人を増やすことは、とても大切です。
しかし同時に、子どもが自分のことを打ち明けなければ安心できない環境ではなく、何も言わなくても、そこにいてよいと思える学校や地域をつくっていくこと。その視点の大切さを、あらためて感じました。
学校で困りごとを経験していても、先生に相談できない子どもたちがいる。
家族に心配をかけたくない、あるいは受け止めてもらえないかもしれないと感じている子どもたちがいる。
誰かに伝えたことで、勝手に他の人に知られてしまうのではないかと不安を抱えている子どもたちがいる。
この現実の重さを知ること。そこから目をそらさないこと。自分にできることを考えること。そのことから始めたいと思います。
教材が届くこと、先生が変わること
報告会では、学校現場に向けた教材づくりや、先生方への伴走支援についても紹介されました。
たとえば、ジェンダー平等と公平をテーマにした絵本「これがじぶんのいろ」シリーズは、低学年や幼児期の子どもたちにも届けられる教材として翻訳出版され、授業で使える教材も公開されています。また、学校全体を安心できる環境にしていくための教材やハンドブック、ポスターなども活用されているとのことでした。
2025年度には、全国の先生方から教材の申し込みがあり、その先にいる多くの子どもたちへ、性の多様性について学ぶ機会が広がっていることも紹介されました。
2024年度以降、小学校の教科書で多様な性に関する掲載が進み、2025年度には中学校の全出版社の教科書にもLGBTQや多様な性についての記載が入ったことが紹介されていました。
そして、その教材をどう扱うのか。
どのような言葉で伝えるのか。
教室の中にいるかもしれない当事者の子どもたちに、どのようなメッセージとして届くのか。
そこには、先生方の学びと、学校環境づくりが欠かせません。
ReBit様は、学校や教育委員会と連携しながら、一人の先生、一つの学校だけで抱え込まない形で、面として取り組みが広がることを目指していらっしゃるとのことでした。
働くこと、福祉につながること、地域で暮らすこと
ReBit様の活動は、教育現場にとどまりません。
キャリアの領域では、LGBTQの方々が就職活動や職場で直面する困難に対して、キャリア支援や企業研修、就労支援者の育成などを行っています。
報告会では、就職活動の際に困難を経験したトランスジェンダーの割合や、困ったときに相談できなかった人の割合、相談しても適切な支援につながらなかったという声なども紹介されました。
また、職場でのアウティングやハラスメントによって、心身の不調や離職につながることもあります。働くことは、生活の糧を得るだけでなく、その人が社会の中で自分らしく存在できるかどうかにも深く関わります。
福祉の領域も大切です。LGBTQであること自体は病気や障害ではありません。しかし、学校でのいじめ、職場での困難、家庭や地域での孤立などが重なることで、精神疾患や生活困窮につながることがあります。
報告会では、この10年以内に精神障害を経験したLGBTQの方が4割、生活困窮を経験した方が2人に1人という数字も共有されました。また、福祉や行政サービスを安全に利用できなかったという声も紹介されていました。
必要なときに、必要な支援につながれること。
支援につながった先で、さらに傷つけられないこと。
そのために、ReBit様は就労移行支援事業所の運営や、福祉事業者へのノウハウ共有にも取り組んでいます。
さらに、まちづくりの領域では、自治体への伴走支援や、地域で活動する団体への中間支援にも力を入れています。報告会では、約450の自治体に伴走したこと、地域の団体やユースリーダーへの支援を行っていることも紹介されました。
学ぶこと、働くこと、福祉につながること、地域で暮らすこと。それらは本来、切り離せないものです。ReBit様の活動は、その一つひとつをつなぎながら、誰もがありのままで未来を選べる社会をつくるための実践なのだと感じました。
中間支援を担うということ
報告会では、ReBit様が休眠預金活用事業の資金分配団体のひとつとして、地域でLGBTQに関する取り組みを行う団体への伴走支援や助成を行っていることも紹介されました。
この点にも、深く敬意を覚えました。
JCDAも2020年から3年間、「病気の治療と仕事の両立支援の取り組み」において、休眠預金活用事業の実行団体として助成を受けた経験があります。その際、資金分配団体として公益財団法人日本対がん協会様に大変お世話になりました。
同事業の実行団体は、現場で直接支援に取り組む存在です。しかし、助成金を得ても、それを効果的に活用し、活動を継続・発展させていくためには、資金だけでなく、知見、ネットワーク、伴走支援が必要になる場合があります。そこに中間支援を担う団体がいることで、現場の団体の課題に伴走し、活動をさらに広げ、深めていくことができます。
ReBit様が、当事者や子ども・若者への直接支援に取り組むだけでなく、地域で活動する団体を支え、次の担い手やリーダーを育てる側にも立っていること。
それは、社会を変えていくための土台をつくる、とても重要な役割だと思います。
「にじいろバトン」に込められた意味
私自身も、ReBit様の継続寄付プログラム「にじいろバトン」を通じて、ささやかながら個人的に活動を応援しています。
以前、代表理事の藥師実芳さんから、寄付には活動資金を支えるという意味だけでなく、「あなたに関心がある大人がいる」というメッセージを子どもたちに届ける意味もあるのだと伺ったことがあります。
顔は見えなくても、どこかで自分たちのことを知り、支えたいと思っている大人がいる。その事実が、ほんの少しでも希望につながることを願っています。
寄付は、活動を支えるための資金であると同時に、孤立しそうな子どもたちへ、社会の側から関心を届ける営みでもあるのだと思います。
少しずつ、何度でも
ReBitという名前には、「少しずつ、何度でも繰り返すことで社会が変わっていきますように」という願いが込められていると伺いました。
社会は一度に大きく変わるものではないかもしれません。
けれども、教材を届けること、先生が学ぶこと、企業が研修を受けること、自治体が一歩踏み出すこと、地域の団体が支え合うこと、寄付という形で関心を届けること。
その一つひとつの積み重ねが、誰かにとっての「生きていていい」「ここにいていい」につながっていくのだと思います。
私にできることは限られています。それでも、少しでもお役に立てることがあるなら、これからも関心を寄せ、できる形で応援していきたいと思います。
自分のありようを認めてもらえない辛さ。
隠しながら生きていく苦しみ。
そして、自分の命を絶つほどに追い詰められてしまう子どもたちがいるという現実。
そのようなところまで、子どもたちが追い詰められてしまうことがあってはならない。
今回の報告会を通じて、ReBit様の活動の広がりと、その根底にある切実な願いをあらためて感じました。心から敬意を表するとともに、これからも応援していきたいと思います。
JCDA理事長 佐々木 好
▼関連リンク
ReBit様の活動・調査・教材
・LGBTQ子ども・若者調査2025
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000047512.html
・絵本「これがじぶんのいろ」シリーズ
https://rebitlgbt.org/news/16705/
・「これがじぶんのいろ」シリーズ 教材キット
https://rebitlgbt.org/jibun-no-iro/
・支援者のLGBTQ意識調査2023
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000047512.html
・LGBTQ医療福祉調査2023
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000047512.html
・自治体LGBTQ/SOGIEできることハンドブック
https://forms.rebitlgbt.org/rebit/form/LGBTQSOGIE/formperma/y2HL1_S3MeJBSdkOzhsCT7ir9NyDI-_n3iQaj9imsPo
・教育・伴走支援事例「先生だからこそ、変えられる未来がある」
https://rebitlgbt.org/news/16962/
・LGBTQ/SOGIE分野に取り組むユースリーダーシッププログラム「diverseeds2026」
https://rebitlgbt.org/news/17104/
JCDAでの関連する取り組み
・国家資格キャリアコンサルタント KT03 技能講習(対象別キャリアコンサルティング) ③
キャリアコンサルタントに求められる多様な性(LGBT等/SOGI)の理解と対応
https://www.j-cda.jp/seminar/consultant/seminar_review_kt03.php
・JCDA特別セミナー「LGBTQ×キャリア」
https://www.j-cda.jp/notice/10214.php
・LGBTQ子ども・若者調査2025 オンライン報告会に参加しました
https://www.j-cda.jp/blog/blog11339
・シリーズ対談9 よりよい社会のデザインに向けて
ゲスト:認定特定非営利活動法人ReBit 代表理事 藥師 実芳 さん
https://www.j-cda.jp/blog/blog9648
・東京都「LGBTフレンドリー宣言」
https://www.lgbtq-company.metro.tokyo.lg.jp/friendly/




